ジヴェルニーから早く帰って来たので、ペール・ラシューズ墓地へ向かう事にしました。 ここにはショパンのお墓があるので一度は行きたかった所でした。 お墓巡りは宝探しのような趣があって、見つけた時には何だか達成感のような感覚があります。 まぁ筋金入りの“墓マイラー”こと梶ポンさんの足元にも及びませんが結構好きです。 メトロの駅もペール・ラシューズと分かり易く、地上に出ると大きく長い壁が目に入りますので、直ぐそれが墓地であることが分かりました。 階段を登るとそこは角っこのようで、正面入り口の方まで歩いて行きました。 それにしてもこの墓地は思っていた以上に大きく、丘に沿っているようで登りながらの参拝となり大変です。 ![]() 地図を頼りに、正面入り口に近い“ロッシーニ”からです。 メイン通路に面した彼のお墓はすぐに見付かりました。 ![]() 人気の作曲家だったので、若いうちから贅沢な生活ができ40歳ほどで作曲家を引退し、何と料理研究家としてパリで遊んでいました。 パリで亡くなっていますのでここにお墓がありますが、遺体は後にフィレンツェのサンタ・クローチェ教会内に移されています。 さて、次に目指すは“ショパン”です。中央のチャペルを目指して歩きましたが中々の勾配で段々とキツクなってきました。 右に曲がると細い通路に面して建っていました。 さすが人気作曲家だけあって沢山の花が飾られていました。 ![]() 彼も心臓はワルシャワに安置されているそうです。 ワルシャワ生まれですが、両親ともフランス人で彼もフランス風の感覚を持っていました。 なるほど昔からコルトーを初めフランス人のピアニストで、ショパンを得意にしている人が多い訳です。 尤もペルルミュテールのようにポーランド人ながら唯一ラヴェルの弟子で、長年パリで活躍したピアニストもいましたね。 この近くにはプーランクやケルビーニなどもいますが、あまり時間もないので次をめざしました。 大きなロータリーに出て一休みです。 中央には大きな台座に乗ったギリシャ風の服を纏った巨大な立像が立っています。 誰なのだろうと、名前を読むと“ペリエ“と書かれていますが、まさかあの炭酸水の”ペリエ”とは関係がないのでしょうね。 ![]() さあここから更に勾配が厳しくなった道を上りコローさんを目指しました。 この辺の地区は入り組んでいて、お墓がぐちゃぐちゃ入り乱れています。 どこがどの区なのか分からなくなって、グイグイ奥の方へ掻き分けるように入っていくと、ちょっとした空間の木陰にでました。 そこにはトルコ系の顔をしたお爺さんとフランス人のオバサンそれに日本人らしき男性という 何とも不思議な組み合わせの3人がバラバラと座り込んで話しています。 お爺さんが「“コロー”か?」と尋ねてきました。 「そうだけど!」と答えると後を指差しています。 振り返ると、ありました“コロー”さんです。 肖像写真で見たソックリの胸像が鎮座しています。 ![]() 「ここはコロー・ファミリーが入っているのだよ!」と追加説明が・・・ お爺さんは、傍に生えていた紫の花を一輪もいで「ホイ!」と渡してくれました。 これを恐る恐るお墓の上に、お供えしました。 それにしてもあの穏やかかで小振りの絵からは想像できない立派なお墓で、ちょっとイメージとは違いました。 ![]() 「他に誰を探しておるのじゃ?」・・・「ドーミエだけど」、「じゃぁ連れていってあげる。」と 3人は各々腰をあげ墓の間を下りはじめました。 歩き出して直ぐ、ほんの3つほどお墓を抜けると「これじゃよ!」とお爺さんが示したのは全く目立たない四角い石のお墓です。 上に刻まれている文字も朽ちていて、読めそうにありません。 こりゃお爺さんに教えてもらわなかったら永遠に見付からなかったでしょうね。 お爺さんは上に置かれている鉢植えの葉っぱをグシャグシャといじりながら 「ワシャ元々庭師で、今はボランティアでお墓のガイドをやっとるんじゃよ!」と、どうりで詳しい訳だ・・・ ![]() 「次は誰じゃ?」・・・「エエッまだ付いて来てくれるの?」 「はいドーデーですが・・・」、お爺さんはゆっくりと歩きだしましたが、迷いはありません。 2m以上もあろうか大きなお墓の間をすり抜け、「ここじゃよ!」、角っこに彼の肖像が現れました。 これも案内されなかったら見付けるのが困難なお墓でした。 ![]() もうこの辺からフランス語になり日本人男性が朴訥な日本語で説明してくれました。 途中、これはフランス啓蒙主義を唱えた誰それじゃ、とかヴィクトル・ユーゴの息子、それにナポレオンの息子の“乳母”など説明が尽きません。 ![]() 「それを見てご覧!」と指差されたお墓の上には、沢山のジャガイモが乗っています。 「この人はアンデス原産のジャガイモを今日のように改良したのだよ・・・ もっとも彼は18世紀のことで、ドイツではすでに16世紀には改良されていたのだよ!」と得意げに説明していました。 ![]() その内、“モリエール”のお墓が鉄柵の上に現れました。 ラ・フォンテーヌのお墓と一対をなすように隣り合わせです。 「彼のお墓には遺体が入っているかどうか不明なんだよ!」、 「この当時、喜劇役者たちは共同の墓地に一緒に葬られることを望んでいたからね!」と、ほぅここでも詳しい。 ![]() 「次は誰じゃ?」、「はい、ボーマルシェです。」、もうこの辺から余りの詳しさに畏敬の念すら覚えるようになりました。 “ボーマルシェ”モリエールと同時代の喜劇作家で、我々オペラに携わった人間には “セヴィリアの理髪師”や“フィガロの結婚”でお馴染みです。 処で、この区画は時代別とジャンル別に分けられているそうです。 「これがボーマルシェだよ!」、エエッ先ほどのモリエールのような感じをイメージしていたのですが、余りにも立派で逆に見落としてしまいそうです。 ![]() なんでも彼は国王に仕えた重鎮だそうで、特にアメリカ独立戦争の時は、彼らを見方にに付けたいと、 当時敵対して恐怖を抱いていたイギリスに対し、発覚しないように 偽装工作をしながら武器、弾薬をアメリカに送っていたそうで、彼がその総指揮官だったそうです。 さて、この辺りで「閉門時間が迫ってきたので、我々はこの辺で!」と丁寧な挨拶に、私も丁重にお礼を言って別れました。 唯、もう一人だけ行きたかったのでチャペルの先まで大急ぎで歩きました。 それは“ビゼー“さんです。 ここでも大きなお墓の谷間ですが、こじんまりと良い感じで佇んでいました。 ![]() さて、今回は半分ほどしか周ることが出来ず、ドラクロワやモディリアーニなどに挨拶ができないままなので、また近々生きたいなと思っています。 ![]() あの3人は幻だったのでしょうか・・・否、あの辺に住み付いているタヌキとキツネとイタチの化身かも知れませんね。 また、次回コローさんのお墓に行けば会えるかな・・・
by Atelier-Onuki
| 2022-07-16 00:05
| フランス
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