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私の好きな晩秋の音楽 (11月のコラムより)

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秋も深まり長い夜を過ごす頃となりました。

こんな夜はしみじみとした音楽に身を委ねるのも良いものです。


私がよく聴く曲では、ブラームスのピアノ・トリオの1番があります。

この曲はブラームス21歳、若書きの作品で、初めての大作だったそうです。

その後、58歳の時に改訂をし、今日はこの版で演奏されています。

こんな長い間、思いを暖めて手を入れたのは、彼自身そうとう気に入っていたのでしょうね。


私が初めてこの曲のライヴを聴いたのはルツェルン音楽祭でのことでした。

プレヴィンがピアノ、ムターのヴァイオリン、ハレルのチェロという組み合わせでした。

この当時はムターとプレヴィンの結婚直前で何とも仲むつまじく、共演のハレルがちょっと気の毒に感じるほどでした。


1楽章は若書きとは思えないような、落ち着いた導入で、しみじみとした音楽が展開していきます。

そして2楽章のあのピアノによって導かれた後、ヴァイオリンが甘くて切ないメロディを弾きだすと、

思わずジーンと来るもの感じ熱いものが頬をつたいました。


残念ながら彼らの録音は残っていませんが、この曲を聴く度にこの演奏と、

会場脇から広がるルツェルン湖の青白く暮れて行く光景が思い出されます。


さて、2曲目もやはりブラームスの「間奏曲集」です。

これは彼の最晩年の作品で、昔を慈しむように思い出し、

その楽しかったこと悲しかったことなど、しみじみとした思いを曲に込めています。

これらは一気に書き上げられたのではなく、思い出す度に書き溜められました。

その中でも私は最初のop117-1番が大好きです。


演奏は余りにも常識的ですが、グレン・グールドの録音で楽しんでいます。

これを録音したのは未だ28歳の時にも関わらず、こんな枯淡の域に達したブラームスの心情に寄り添うような愛情が感じられます。


グールドといえば、何と言ってもバッハの演奏が有名で、画期的な表現方法を駆使し、金字塔ともいえる業績を残した人です。

バッハはチェンバロのために作曲していて、それをピアノ演奏で限りなく多用な可能性を探り、殆どをスタッカートで演奏されていますが、

このブラームスでは慈しむかのようにレガートで柔らかく表現しています。

ブラームス独特のほの暗いロマンチズムも充分ですが、控えめで品を保っています。



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by Atelier-Onuki | 2022-11-23 01:47 | コラム | Trackback | Comments(0)
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