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ヘルベルト・フォン・カラヤンさんの思い出 (5月のコラムから) 

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長年、音楽界の帝王として君臨されたカラヤンさんの事は音楽に興味のない人でも知っているほどで、今更何の説明も必要ありません。

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彼の生演奏に接したのは、やはり1970年の大阪万博の時に来日され、

ベートーヴェンの交響曲全曲の演奏会をされた時のこと、その内の4番と7番の演奏会を聴くことが出来ました。

当時はベルリン・フィルとの頂点とも言って良い状態で、その一糸乱れぬアンサンブルに舌を巻きました。

何と弦楽群の弓の角度まで揃っていました。


その後、私はウィーンに住むようになったのですが、彼は毎年「フィングステン」の時にウィーン・フィルとの演奏会をされていました。

彼の演奏会が迫っていた時、会場のムジークフェラインから道路を挟んで建っているインペリアル・ホテルのカフェへ出向きました。


一番奥の席に着き、前に置いてあるグランド・ピアノの向こうが何だか明るいのにフト気付きました。

な何とそこにはカラヤンさんがご機嫌麗しく、後光を放ちながら歓談されていました。

お邪魔をしてはいけないのでなるべく見ないように心がけていました。

そして帰り際、前を通るときになって軽く会釈をしましたら、なんとこちらを凝視して大きく3度うなずいてくれました。


その演奏会はブラームスの「ドイチェス・レクイエム」でした。

ゆっくりとした歩みで登場されましたが、何だか顔も晴れやかで、相変わらず後光は射しておられました。

静かに慈しむようなオーケストラの前奏に導かれるように、

Selig sind,die da Leid tragen「幸いなるかな、悲しみを抱くものは」と合唱によって歌い始められましたが、

まるで天上からの響きのような神々しさです。

曲は重々しい足取りで2曲目に入りました。“Denn alles Fleisch,es ist wie Gras「肉(人)はみな、くさのごとく」と歌われ、

後半に入ったころ、アチコチから鼻をかむ音が聞こえてきます。

6月で暖かいのにも関わらず風邪をひいている人が多いのかなぁ、まぁお年寄りが多いので仕方がないかなぁ!」と思いつつも、

余りにも多いので回りを見回した処、何と大勢の人たちが泣いているのでした。


まぁオペラでは時々、泣いている人もいますが、演奏会でこれだけの人たちが泣いている状況はこの時だけの体験でした。

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by Atelier-Onuki | 2023-05-22 23:42 | コラム | Trackback | Comments(0)
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