2016年 06月 14日 ( 1 )

ウィーン・フィルとセガンによるブルックナー9番の演奏会

先週の土曜日にケルンでウィーン・フィルの演奏会があったので行ってきました。
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指揮者はヤニック・ネゼ=セガンといってフランス系カナダ人で今が旬の指揮者です。

彼はウィーンやベルリンへの客演も多いのですが、
現在ロンドン・フィル、ロッテルダム・フィル、フィラデルフィア管弦楽団と3つのオーケストラの音楽監督です。

しかも来年からはメトロポリタン歌劇場の音楽監督にも就任する予定で、今や引っ張りだこの指揮者です。

4年ほど前に彼の演奏をウィーン・フィルで初めて聴いたのですが、
その時の演目「幻想交響曲」は私が聴いたなかで一番の演奏だったのではないでしょうか。
(この曲はポピュラーなので聴く機会も多く、今までもバーンスタインを初め、
ムーティやラトル、マゼールなど大御所の演奏も聴いていました。)

演目は
ウェーベルンの「パッサカリア」と
ブルックナーの交響曲9番で、休憩なしの演奏会でした。
(この休憩なしの公演は早くビールが飲みに行けるので結構好きです。)

座席に着き、いよいよオーケストラがキュッヒルさんを先頭に入場してきました。

オーケストラによっては全員が入場した後から勿体を付けるようにコンマスが一人で登場し
拍手を浴びているオケもありますが、ウィーン・フィルはいつもコンマスが真っ先に登場し皆をリードしています。
調弦も一般的なオーボエに合わせるのではなく、
コンマスの音程に全員が調律するという徹底ぶりで、他のオケも見習ってほしいものです。

それにしてもキュッヒルさんの体力は大丈夫でしょうか。・・・
もう去年定年をされているのに、こんな難しい曲のコンマスでの旅公演、・・・
しかも前日はドルトムントで明日はバーデン・バーデン、
次の日はフランクフルト、最後がウィーンと5日間の連続公演なので、本当に心配になります。
(ウィーン・フィルは4人もコンマスがいるので違う人でも良かったのにと思うのですが、
キュッヒルさんが入ってくれると何時も引き締まった演奏になるので聴衆としては嬉しいのですが。・・・)

さて、緊張感が漂うなかセガンが登場しました。

弦のピチカートによって静かで不気味に始まった曲は、木管が退廃的なメロディで受け継いで行きます。
そのダラッ~とした雰囲気を弦が受け一旦は金管楽器も加わり盛り上がりを見せると、
一転してクールな感じながら甘いメロディへと移って行きます。

不協和音のなかにも、なんと魅力的な響きが展開して色気すら感じるほどです。
ヴァイオリンのソロなど耳がトロケそうになります。

私は正直なところシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンの3人、
いわゆる新ウィーン楽派といわれる作曲家の音楽にはそれほど親しんでいませんでしたが、
このウィーン・フィルのような演奏をしてくれたら充分その綺麗さが伝わってくるようでした。

この曲はウェーベルン最初の作品で管弦楽法などはブルックナーの影響も受けているそうで、
この日の一曲目に持ってきたのでしょうね。・・・

さて、何名かの団員が入れ替わり、いよいよブルックナーの9番です。

それにしても大編成、木管、金管とも3管編成でホルンなど8本も入っています。
後列の4人はワグナー・チューバも携えていて3楽章では持ち替えて吹くのでしょうね。

唯、普段見かけない顔の人たちも入っていて、弦の後ろの方1/4ほどはトラを入れているようです。
(まぁこの日もウィーンではオペラの公演があるわけですから全員が来るわけには行きません。)

さて、この曲は4楽章の構想を練っている途中で作曲家が亡くなってしまいましたので、
3楽章までの未完成交響曲です。

近年は4楽章を編さんしたバージョンで演奏するケースもありますが、
まぁ3楽章で終る方が妥当かなぁと勝手に思っています。

弦の静かなトレモロに乗ってホルンが荘厳に鳴りだしました。
木管がリズムを刻み一回目の金管の爆発と共に長い1楽章の大伽藍が始まりました。

すぐに弦楽器が甘い旋律に移り、面々とした音楽が続いて行きます。

楽器の響きを重ねながら同じ音系が連なっていく様は、
オルガン奏者でもある作曲家がフーガを奏でるように響き渡ります。

当たり前のことですが、ウィーン・フィルの音はやはり綺麗・・・
弦は蕩けるようだし、金管など渋くて深い響きはフルパワーで吹かれても、
煩いどころか気持ち良い・・・
もうこの音の洪水に身を任せるしかありません。

オーケストラは旅公演にも関わらず全力の直球勝負といったところでしょうか、
コンマスのキュッヒルさんなど顔が真っ赤、いや頭の先まで真っ赤になりながらの熱演です。
もう本当に「倒れないだろうか?」と心配になってきます。

曲はちょっと浮世離れした飛んだ世界で、2楽章も3楽章も長い曲ですが、
ドンドン引き込まれて行きアットいう間に終楽章に差し掛かっていました。

セガンも屈託のない表現でやはり直球勝負の気持ち良い指揮です。

そりゃブルックナーはこのオーケストラの音をイメージしながら作曲をしたと言われていますから、
余計なことはなにも考えずに勝負すれば、結果的にこのような良い演奏が仕上がるはずです。

もうこの心地よい響きが何処までも続いてくれないかなぁと、思いながらも曲は静かな別世界へと入り、
夢見心地の弦による静かな刻みにホルンが絶妙に絡みながらフィナーレを閉じました。
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曲に酔いながらボーッと帰路に付きかけたのですが、
「オッと今日は娘の彼氏も来ていたのだ!」と思い出しました。

開演前にボーッとしていたら後ろから「お父さん!」と突然声をかけられ
「オッ!」とよろけそうになっていました。

彼はトランペットをやっているので、ブルックナーやマーラーなど金管楽器が活躍する曲がすきだそうです。

なんでも娘もケルンに来ていてコンサートには来ず、友達と何処かで飲んでいるようです。

結局は旧市街地の広場で合流することになりました。

この広場に面した飲み屋という飲み屋は大型のテレビを出して、
ちょうどヨーロッパ・カップの観戦中です。
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どの店も大勢の人がTVにかじりついて大賑わいです。
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もう先ほどまでの夢見心地は一気に現実へと引き戻され、ビール、ビール・・・
夜がとっぷりと更けるまで飲んでいました。


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2016-06-14 00:10 | 音楽 | Trackback | Comments(0)