カテゴリ:イギリス( 4 )

コッツウォルズ地方を訪れて

先日、ロンドンでの用件がちょうど金曜日まで掛かったので,週末はちょっとコッツウォルズ方面まで足を延ばしました。

それはフランクフルトなどの大きな空港で「何とか先生と行くコッツウォルズ・スケッチの旅」なんてプラカードを掲げたグループを良く見かけます。
それに随分前ですが安野光雅さんがNHKの番組でこの辺もスケッチ旅行に来られている本を読んだ事もありました。

写真で見ていると古い家並みの長閑で雰囲気のある中々良さそうな所ですし、これだけ多くの人達がスケッチに訪れているからには、
さぞかし良い絵の題材になる風景なのだろうなと思っていました。

何でも「コッツウォルズ」は古い英語で「羊の丘」とか云う意味だと何処かに書いてありました。

どうりで途中の丘陵地帯には多くの羊の群れを見かけました。
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さてロンドンのヴィクトリア駅から長距離バスで南西に向けて2時間半サイレンセスターと云う町まで行ってローカル・バスに乗り換えました。
ここからはもう30分ほどでお目当てのバイブリーと云う村に到着です。

バイブリーは我々デザイナーの祖でもあるウィリアム・モリスが「イギリスで一番美しい村」と称えたとか何処かで読みました。

もう途中の車窓からは丘陵地に点在している蜂蜜色と云われている石で出来た古い家々が見えています。
この様式は良く統一されていて壁はもとより屋根も薄く割った石で覆われています。

いよいよ村の入り口にある駐車場でバスを降りると、そこには趣のある古い石橋が掛かっていて綺麗な小川が流れています。
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それに水が澄んでいて綺麗なこと、緑が鮮やかな水草がクッキリとした色でゆらゆらしていて、その間を何匹もの鱒が泳いでいます。
良く見るとここの種類はどうもレインボーが殆どでドイツやオーストリーにいるブラウンではありません。
カモ達に混じって白鳥も2・3羽泳いでいます。

橋の袂には,見事に真っ赤に染まった蔦に覆われた大きなホテルが建っていて、
その名も「スワン」、先程の白鳥を見ていたので納得の命名です。
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お腹も空いていたのでここで昼食を取ることにしました。
ちょうど結婚式をやっているようで、ホテルやバーは込み合っていましたが、レストランは大きくて気持ちの良い雰囲気、
それ程お客もいなくて落ち着いていました。
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コース料理からスープとチキンのグリルを選び、
先ず、ポアロ(太い葱)で味をとったポタージュ・スープが出てきました。

イギリスは概ね美味しくないのでそれ程期待をせずに頂いたのですが、一口食べて
ウッ・・・上手い!!・・・如何したのだろう、これはほんのり甘みがあって相当美味しい味付けです。
続いて出てきたチキンもちゃんと網目の焼き目が付いていて、チキン自体もしっかりとした味があって美味しい、
・・・添え物の温野菜やポテト・サラダもちゃんとした味付けで、こりゃバイブリー侮れない・・・と初認識です。
ロンドンでもなるべく美味しい店を食ベログで選んで行ったのですが、これは今回一番の味でした。

ゆったりとした時間を過ごし満足のまま川に沿ってブラブラ歩き出しましたが、見えている家々は統一された石作りで、
どれもこれも素敵で中々前に進みません。

川の向こうにはもっと古そうな家並みがまるで長屋のように建っています。
ここはアーリントン・ロウと呼ばれる一角だそうで、(後から調べました)何でも14世紀に建てられたそうですからもう700年位前の建物です。
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元々は羊小屋だったそうで納屋を経て今は住居になっているそうです。
ここはこの村でもハイライトなのかパラパラと観光客が歩いています。
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小川に沿って更に一番奥まで行き坂道を上り降りすると、教会の向こうにお城が建っています。
現在はホテルになっていて、ここも見事な蔦が絡まっています。
何でも安野さんが来られた時はこのホテルに滞在されていたそうです。
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この村も隈なく散策をしたので、さらにバスを乗り継いで南下しました。
今度はカッスル・クームと云う村を訪れました。
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ここは谷間にある村でここも良く古い家並みが見事に保たれています。
村の外れにはやはり立派なお城があって、ここも現在はホテルで例によって見事な蔦が絡まっています。
それにしてもこれらの家々やお城には絡まった蔦が良く似合っています。
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村の中心にある、いかにも中世風の教会へ入って見ました。
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ちょっと朽ちかけた墓石が教会を囲む様に点在しています。
それは未だ単純な形で板状の物や箱型の物が殆どですが、それも斜めに傾いていたりして長い年月を感じさせます。
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暫く歩いていて、「これは何処かで見た光景だなぁ。」と思い返していましたが、そうだ
ドニゼッティの「ランメルモーアのルチア」最終幕で出てくる墓場のシーンそっくりです。
実はもう三十数年前にこのオペラの舞台監督をさせて頂いたのですが、全くこれに似たシーンを作ったことを思い出しました。
そう云えばこの話は17世紀ころのスコットランドですから辻褄が合う訳です。

今回は時間がなかったので現地ではスケッチをする事ができませんでしたが、もう描きたくなる風景の連続で写真を一杯撮り溜めしました。

これから寒くなる冬場は家でこれらの題材をボツボツ取り組んで行こうと思っています。




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by Atelier-Onuki | 2013-11-01 01:06 | イギリス | Trackback | Comments(2)

ナショナル・ギャラリーでの再会

先々週はロンドンへ行っていましたので、時間を見つけ再びトラファルガー広場にあるナショナル・ギャラリーを訪れました。
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それはちょっと前のブログでも書いたホッベマの「並木道」と再会するのがメインの目的でした。
ギャラリーの一番奥まで一直線に進み最初にこの絵と一年ぶりに再会しました。

女性との再会では年月が経っていると、それなりに変化もされているのですが、
絵の場合その美しさは何年後でも殆ど変りませんし、修復されていた場合などはより美しくなっている事すらあります。
(こんな事を書いたら女性たちからのヒンシュクをかいそうですが、イヤイヤ余り変らない方々もおられますよ。)

この日も「並木道」は相変わらず一番奥で輝を放っていました。
良く描きこまれた落ち着きのある絵で気持ちがホッとします。
フムフム、なるほどと訳の分からぬ独り言を云いながら暫く眺めていました。
2つほど先の違う部屋にもホッベマの他の作品が師匠格のロイスダールたちと共に展示されているのですが、
この「並木道」が群を抜いて素晴らしい作品だと再認識しました。

何時もですとこの広大なギャラリーを隈なく観るのは難しいので、早めに印象派辺りへ足を運ぶのですが、
この日は気分がルネッサンス方面に向かわせました。

そこにも名画の数々が所狭しと展示されているのですが、一枚の絵が浮き上がるようにして目を釘付けにしました。
それはダ・ヴィンチの描いた「岩窟の聖母」でした。
この部屋にはボッティチェリやリッピなども展示されていて、それらも素晴らしい名画なのですが、
やはりダ・ヴィンチのこの作品が群を抜いて際立っています。
大きさも2mほどの高さがあってダ・ヴィンチの絵の中では大きな一枚です。
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この作品は実は二枚描いているそうで、最初に描いた方はルーブルに展示されていて、こちらは後から描いた方だそうです。

まぁ構図と云い描写と云い完璧で私の拙い文章ではその賛辞を表現しきれません。
特に驚いたのは中央やや右の位置に差し出されたマリアの左手が宙に浮いて見えることです。
まるで3Dの立体映像を見ているようで、今から500年以上も前なのに今日的な感覚を持っていたとは驚きでしかありません。
その手は実際よりも大きく描かれ、指先から付け根にかけてもちゃんとパースペクティヴをかけて表現しています。
そのデフォルメ具合も自然で品を保つギリギリ位に保たれていますし、更に指先にはササッと早いタッチで輪郭の外に何本かの線が
微かに加えられていて動きすら感じるほどです。
ホトホト感心をしながらズッ~と観ていました。

幾つかの部屋を歩いて51番の部屋まで遡ってきました。
ここは1250年から1350年のイタリア絵画ですのでダ・ヴィンチよりも200年ほど前の作家でジョットーなども展示されています。

ここで気を付けなければならないのが全く見つけ辛い洞窟のような暗い小部屋が隠されている事です。
それはBonaventuraと云う作家の「Crucifix」という十字架型のベースに描かれた十字架上のキリスト像が展示されている
壁面の両サイドに小さな入り口があります。
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そこを潜るとなんと又ダ・ヴィンチが一枚だけ展示されています。

それは先程の「岩窟の聖母」の下絵かイメージを描きとったデッサンで、光に当てると退化するためこのような暗い部屋に閉じ込められています。
その墨やチョークで描かれたデッサンはもう下地なんて代物ではなく、それは素晴らしく描かれていて崇高な雰囲気を醸しだしています。
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その深みや闊達さデッサンとは云え色合いの凄さに、もうも完全に打ちひしがれ唯々、無言でウーンと唸りながら見とれているだけです。

この部屋は本当に目立たず見落としがちなので、写真があればと思うのですが、このギャラリーは堅く撮影が禁止されています。
美術館によってはフラッシュさえ炊かなければ撮影が自由という大らかな所もありますが、その辺は保存法など其々の美術館によって違うのでしょうね。

以前ルーブルで「モナリザ」の前に大勢の人が集っていて、凄い勢いでフラッシュを炊いていました。
余りに酷い状態なので「こんなにフラッシュを炊いて絵が痛まないの?」と係員に言ったのですが
「ここは特殊なガラスに入ってフラッシュの光は通さないので大丈夫ですよ。
・・・でも忠告ありがとう。」と言っていました。

それにしてもダ・ヴィンチさんは凄い。・・・
改めて彼の偉大さに感心させられました。


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by Atelier-Onuki | 2013-10-29 01:30 | イギリス | Trackback | Comments(0)

ドビュッシーの「海」は

以前ロンドンに滞在していた折、日帰り旅行をする時間が出来たのでヴィクトリア駅から列車に乗り込み、
南東にあるイーストボーンと云う海岸の町へ向かったことがあります。

ここはドビュッシーがあの「海」を完成させた町だと聞いていました。

長閑な丘陵地帯を列車に揺られること二時間ほどで到着しました。
遅い朝食を取ろうと駅前のPabに入りましたが、結構混んでいてその殆どがお爺ちゃんたち、
皆と云って良いほど殆どの人が朝からビールを飲んでいます。
かつては逞しい海の男たちか・・・今は昔を懐かしむだけの酔っ払いと化してしまったのでしょうか。・・・

町も人出はそこそこあって活気はあるのですが、あの港町独特の何処となく侘しく寂しさが漂っています。

先ずは駅前からバスに乗って有名らしい「セブン・シスターズ」と云う白い断崖絶壁の方から見に行く事にしました。
30分ほどでバスを降り川に沿って丘陵を海に向かいました。
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周りの牧草地にはたくさんの羊が放牧され長閑ながら寂しい風景が続きます。
道と云っても人が歩いた跡が付いている程度で、しかも湿地なのか何処もかしこもぬかるんでいて靴はドロドロの状態です。

それでも途中に点在する潅木の中からはヒバリの鳴き声がひっきりなしに聞こえてきて、
ああそう云えばこの辺出身の作曲家だったヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」なんて曲もあったなぁ~と納得していました。

20分ほどでようやく丘の麓にある民家に到着しました。
もうここから白い岸壁が遠くに見えています。
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更に丘の方へと登って行きましたが、途中のベンチには未だ供えたてと思われる瑞々しい花束が二つ置かれています。
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近くには「“Cliff Edge”から先へ行かないように」と看板が設置されていますが、どうも
白浜の三段壁と同じ不名誉な自殺の名所のようです。
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丘からはセブン・シスターズの岸壁が時折差し込む陽の光に白く輝いています。
これは太古の時代に北フランスの海岸線と繋がっていたのが、地殻の変動で引きちぎられたのでしょうか、まるでパンを引き裂いたような形状です。
そのクッキリと裂かれた線に沿って牧草地が広がる風景はシュールそのものです。
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ちょうど引き潮だったので海岸を沖の方まで歩き眺める事ができました。
対岸のノルマンディ辺りでもそうですが、この潮の満ち引きの激しさは相当のものです。
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岸壁を眺めるのも堪能したので今度は別のもっと川に近いルートを取って歩き出しましたが、道は更に泥るんでいて苦労を強いられました。

バスは町を通り越し更に海岸線まで進みます。
この海岸はイギリスでは有数のリゾート地だそうで、立派なホテルが立ち並んでいます。
さてドビュッシーが泊まった云われるホテルは、まぁグランド・ホテルと云う位ですからそこそこ大きなホテルだと思われるのですが中々見つかりません。
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もう諦めようかと思うほど歩いて行きましたら要塞の向こうに白亜の殿堂のような建物が見えて来ました。
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その大きさはホテルと云うよりも御殿と云った感じですが、その屋根の形やファサードの雰囲気はフランス風でなるほど、
それでドビュッシーが選んだのかなぁと納得していました。
それにしても宿泊代はとんでもなく高そう・・・彼はもう有名になって結構稼いでいたのでしょうね。
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あの「海」の最終楽章を頭の中にイメージしてみたのですが、このホテルから見える風景は海原が広がって行くだけで、ちょっと感じが違うようです。

恐らく「セブン・シスターズ」にも訪れその荒々しい光景もイメージしたのでしょうか。・・・
尤も作曲し始めたのはブルゴーニュだと云われていて、そこには海などはなく彼自身も「昔に見た海の印象を元に作曲した」と言っています。
印象と云えばジャポニズムも意識しているのかちょっと東洋的な雰囲気が醸し出されるシーンもありますし、
事実初版の楽譜には北斎の描いた「神奈川沖波裏」が採用されていて、その大胆な構図の絵は後々もレコード・ジャケットの表紙として多く使われていました。
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逆に私個人はドビュッシーと云えば直ぐにモネを思い出し、
彼が描いたエトルタの暴風雨の絵やベル・イル島で描いている大きな岩に波がぶつかっている絵を思い浮かべます。
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以前マルセイユのバスに乗っていて町外れの丘を登りきった時、パァ~と青い海が開けてきました。
そしたらバスの後方から女の子の声で「ラ・メール~ラ・メール~」と興奮気味に聞こえてきました。
誰でも海が見えるとワクワクするのですね。・・・
まぁこっちの「海」はシュルル・トレネでしたか。・・・



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by Atelier-Onuki | 2013-10-23 02:33 | イギリス | Trackback | Comments(0)

コートールド美術館のセザンヌ

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アヌシー湖のタロアーへ行って以来、何時かはこのセザンヌの絵を見たいと思っていました。
セザンヌの絵は折に付け今まで結構見てきたつもりでしたが、この絵には出会った事がありませんでしたので、それではと調べてみると、ロンドンのコートールド美術館にある事が判明しました。
私はそれまでこの美術館の存在を知らなかったのですが、素晴らしい収集品が集まっているようで、この度ロンドンへ行く機会があったのを機に訪れてみました。

ここは現在キングス・カレッジに属しサマセット・ハウスという大きな建物の一角に美術館として併設されています。それに素晴らしいのは美術館と云うだけでなく、学科の一部となっていて美術史などの研究だけに留まらず、その保存方法や修復の研究にも役立っているそうです。
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中に入ると瀟洒な館と云う感じで、美術館としては小さいながら落ち着いた雰囲気です。
入ってすぐ右側の部屋には中世からルネッサンスの絵画や工芸品が非常にさり気なく展示されています。
奥の方にある半円型をした素敵な階段を上がったら、これも拍子が抜けるほどあっけなく、そのままにゴッホとゴーギャンの名作が目に飛び込んできます。

それにしてもこの美術館はまるでどこかの家庭で観ているのかと錯覚をするほど無防備で実に身近に飾られています。暖炉や素敵な調度品の上にも飾られていて、その調和は暖かい温もりを感じさせます。しかもガラスが入っていない額縁が結構存在しています。
これは鑑賞者にとってはとてもありがたい事で、画家の筆使いや息遣いが間近に迫ってきてドキドキ、ワクワクしながら観る事ができますが、万が一の事があったら…と思うと、とても心配になってきます。

次のちょっと大きな部屋にはマネの「草上の昼食」やモネの素敵な松の絵「アンチーヴ」、更にドガなどが展示されていて、ついついじっくりと観てしまい全然前へ進めません。それにしてもこの部屋の圧巻はマネが描いた「フォリー・ベルジュールのバー」でしょうか、それはそれは気合が入った力作で私の知る限りマネの最高傑作ではないでしょうか。
そしていよいよ一番奥の部屋、右角にもうこの部屋からチラチラとお目当ての絵が見えています。
はやる気持ちと後ろ髪を引かれる葛藤の中、意を決して歩を進めました。
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これです、それはセザンヌだけが6点ほど飾られた一部屋の、窓際の壁に静かに粛々と佇んでいました。
横幅80センチ位のそれ程大きな絵ではありませんが、堂々としていてズシッとした絵です。
やたらダイナミックに描かれた左側の大木を通してほぼ中央の浮島のように見える所にお城が描かれています。
これは前の文章でも書いたように実際よりも、ずっと近くに引き寄せられしっかりとした存在感を与えています。この辺もやはりこの画家の人並み外れた洞察力が伝わってきます。
画面上部のはみ出した所から始まり、斜め右へと力強く流れて行く木の枝葉は、同じリズム感で遠景の山肌へと受け継がれ、最後は左下の岸部で受け止められています。逆に湖面には写し出された山肌が正反対の方向にやや控えめながら描かれバランスを保っています。そして中央には湖に映るお城が強調して描かれよりその存在感を高めています。

全体にブルーと緑をふんだんに使用し寒色系の静かで落ち着きのある絵ですが、手前の木の幹からお城そして一番遠景の山肌の一部には暖色系の淡い色が程よく配色されてこの絵に暖か味を添えています。
その光の指す方向から多分朝日が差し込んでいるのでしょうね。
実際には白い壁のはずのお城や周りの建物にも、淡いコーラルレッドと赤でアクセントを付けるなんて・・・フ~ムとしばし感心の瞬間です。

私は風景画ではコローを始め、次に来る印象派の人達の数々が大好きなのですが、このセザンヌに関しては特に敬虔の念を持って襟を正しながら接しています。
絵に対して何時も真摯に取り組んでいるこの厳格な画家は、実直で人間的には不器用でありながら、ウワッ~羨ましいなぁと感嘆するほど大胆に筆を走らせている部分もあります。
それでいて何時も冷静で哲学的ですらあります。

例えばシスレーなどはもっと人間的で、とても好きな画家(ひょっとして一番)ですが、「ああここなんか苦労しているなぁ」とか、その筆使いから試行錯誤の跡が感じ取られとても親しみが伝わってきます。

その点、セザンヌの絵はいつもちょっと高い位置から距離をおいて、言葉少なに語りかけて来るようです。

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by Atelier-Onuki | 2012-11-07 01:35 | イギリス | Trackback | Comments(0)