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カテゴリ:音楽( 45 )

ペペ・ロメロ と リアル オーケストラ シンフォニカ セヴィリア の演奏会から

先日といっても2週間も前になるのですが、ペペ・ロメロのケルンでの演奏会へ行ってきました。
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以前、彼の演奏を聴いたのは、未だお父さんのセレドニオも健在で、
ペペの兄弟も含めたギター一家によるアンサンブルでした。

演目は最初がビゼーの「アルルの女」から第Ⅰ組曲
タレバのフラメンコ風コンチェルト

休憩後はロドリーゴの「アラフェス協奏曲」と
再びビゼーの「アルルの女」から、今度は第Ⅱ組曲でした。

オーケストラはReal Orquesta Sinfónica de Sevillaといって名前すら聞いたことも無かったのですが、
恐らく鄙びた演奏をするのだろうなと、むしろ楽しみにしていました。

一曲目、それほど大きくない編成ながら「アルルの女」の前奏曲が
‘ジャン・ジャン・ジャン“と有名なテーマが力強くも、引き締まった響きで始められました。
「ウン、こりゃなかなかちゃんとしたオーケストラ!」と益々楽しみが膨らんで行きました。

もっと鄙びた音がするのかなぁと思っていましたが、若干の素朴さはあるものの堂々とした趣で、
木管などのソロ・パートも丁寧に雰囲気をもって演奏されました。

雰囲気も充分醸しだされ、セヴィリア(アンダルシア)とアルル(プロヴァンス)は
どちらも南なので気候も人情的にも似ているところがあるのかなぁと勝手なことを考えていました。

2曲目「メヌエット」に入り軽快にリズムが刻まれていきます。
曲が変奏しハープに乗って木管群が流れるようなメロディを吹く辺りは、
ミストラルに吹かれ丘の上を流れていく雲が目の前に浮かぶようです。

3曲目の「アダージョ」は好きな曲の一つですが、
ゆったりとした甘いメロディがサキソフォンのソロで切なく流れて行きます。
温かい陽が差し込む農家の庭先、お爺さんがベンチに座っていますが、
遠くへ嫁に行っていた幼馴染のお婆さんが訪ねてきて昔話をシミジミ話しているシーンです。

4曲目「カリオン」は3本のホルンによって力強く教会の鐘を響かせます。
「昼さがり」と勝手に思っているのですが、力強くも気だるい雰囲気が好きです。
この曲を聴くとゴッホが描いた「アルルの見える花咲く果樹園」が必ず目に浮かんできます。

この絵はミュンヘンのノイエ・ピナコテークにある一枚ですが、
とても好きな絵で何度も見に行ったことがありました。

画面手前には3本のポプラの幹がブルーで大胆に描かれ、
その向こうには農夫が働く果樹園が描かれていますが、
恐らくアーモンドの白い花々が満開に咲き誇っています。

さらにその奥にアルルの街並みが広がっていますが、
画面の左にはこの曲でイメージしている「カリオン」(鐘)を鳴らしている教会の鐘楼が描かれています。
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さて、休憩後はメインの「アランフェス協奏曲」でペペはこの曲を年間150回ほど取り上げるそうです。

幾ら作曲家と親しかったとはいえ、「まぁよくも厭きないものだなぁ~」と不謹慎な事を
考えてしまいます。

昔、スペインを周った時、この曲に憧れてアランフェス宮殿に行ったことがありました。

とても広大な敷地で閑散としていた印象があります。
ロドリーゴは幼少期に失明をしていますが、
スペイン内戦の時に破壊された宮殿や傷ついた人たちに思いを馳せ作曲をしたそうです。
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まぁ何といっても有名なのは2楽章のメロディで、その甘く切ない旋律は世界中で愛され、
ジャズを初め他のジャンルの音楽家たちも取り入れています。

さすがペペの演奏は手馴れたもので、全曲暗譜での演奏、
安心して聴き入る事ができました。

演奏スタイルも決して慣れなど感じさせず真剣な取り組みで、
曲の最後では見事な指さばきで決めました。

引き続き「アルルの女」の後半です。

1曲目の「パストラール」、穏やかな農村風景が描かれていますが、
ここでもゴッホの絵が浮かんできます。

それは「クロー平野の収穫」で柔らかな陽が照っている畑に力強く働く農夫たち、
それに荷車を引く馬や牛の姿がうかんで来るようです。
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曲は変奏してこの地方の踊りのリズムを素朴な小太鼓の伴奏に乗って刻みますが、ゆったりとしたテンポで何処と無く寂しげな印象で、
これから起こる悲劇を予感しているようです。

2曲目は「間奏曲」で悲劇的な印象を与える力強い前奏のあとホルンとサキソフォンによって
不安なハーモニーを吹いたあと、サキソフォンのソロで甘いメロディが奏でられます。

そのメロディの最終節にはシューベルトのアベ・マリアが暗示されています。

ハープの伴奏を伴い弦楽群が盛り上げていきますが、あくまでも悲劇的です。
最後ははっきりとアベ・マリアの旋律で締めくくられました。

3曲目の「メヌット」は昔この曲が吹きたくて一時フルートのまねごとを練習したほどでした。
ハープの伴奏にのって甘いメロディを静かにシミジミと吹かれます。

最後は「ファランドール」、この曲全体のテーマが最初の前奏曲同様に始まりますが、
途中からこの地方特有の踊りであるファランドールのメロディが乗っかってきます。

この2つのメロディが現れては入れ替わりを繰り返し、途中からは同時進行して行きます。

このドーデー作の短編小説「アルルの女」の悲しい物語を、
アルル地方の熱い舞踊音楽を背景に運命的な幕切れを閉じました。

この曲はこんなに名曲にも関わらず余り演奏会では取り上げられませんので、
とても貴重な体験でした。

オーケストラも気合の入った好感がもてる演奏で、とても楽しむことができました。

あぁまた「アルルの女」聴きたいなぁ~



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by Atelier-Onuki | 2019-04-02 00:36 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

アンドレ・プレヴィンさんの思い出

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2月28日ですから1ヶ月近く前になりますが、
また一人偉大な音楽家アンドレ・プレヴィンさんが亡くなりました。

彼はたぐいまれな才能を持った音楽家で、
ジャズ・ピアニスト、作曲家そして指揮者として活躍されました。

ここまで多才な音楽家は他にバーンスタインくらいしか思いつきません。

戦前のベルリン生まれで、ロシア系ユダヤ人だったため一時フランスへ逃れ、
9歳の時に一家でアメリカに亡命したそうです。

まぁ一般的に考えるとこれは、とても辛い運命なのですが、
もしドイツに留まっていたら全く違ったタイプの音楽家になっていたかも知れませんね。
アメリカ西海岸で育った彼は若い頃からピアノが滅法上手かったそうで、
何枚かジャズの伴奏をしているレコード録音が残っていますが、
軽やかなタッチの、もうメチャメチャ上手いピアノを弾いています。

映画音楽の作曲や編曲にも長年携わり、
有名なところでは「マイ・フェア・レディ」や「ポギーとべス」が上げられます。

その後、指揮者としてデビューするのですが、この映画に携わっていた経験が
彼の演奏スタイルに大きな好影響を与えているようです。

それは、物語性のある音楽において、その情景描写は天下一品でした。

彼の演奏に最初に接したのは学生時代に買った「くるみ割り人形」のレコードでした。

これはまぁジャケットに描かれた絵が綺麗で、思わずジャケ買いをしたのですが、
演奏は飛びっきり良い感じで未だに愛着のあるレコードです。
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実際の演奏会では、ケルンで聴いたプレヴィン・トリオ、
ベースにレイ・ブラウンらが加わったお洒落なジャズの演奏でした。

休憩後、演奏が始まる前に指慣らしなのでしょうか軽く一節を弾きましたが、
それはラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」のメイン・テーマでしたが、
ハッとするほど円やかに弾み途中からジャズ風に崩されて行ったと思うとあっけなく終ってしましました。

「エェ~もっと弾いてくれたら良いのに・・・」と惜しみつつも耳には至福の瞬間でした。

その後、ルッェルンで聴いたのもトリオですが、
今度はムターとハレルが加わったクラシックのトリオでした。

モーツァルトとラヴェルの三重奏の後、最後はブラームス1番の三重奏、
このブラームス若書きの作品は大好きなのですが、ピアノのリードで始められた2楽章、
ムターの甘い旋律が絡み始めたその瞬間、背中にゾクッとする感覚と共に目頭に熱いものを感じました。

終演後、夕闇に染まった湖の風景と共に、生涯忘れられない演奏でした。

まぁあの頃はムターと結婚する直前で、そりゃ仲むつまじい雰囲気で、ハレルがかわいそうなくらいでした。

録音ではやはり先ほどの「くるみ割り人形」を初めチャイコフスキーの残り2つのバレエ音楽や
ウィーン・フィルと録音したメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」、
それにリヒァルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」や
「バラの騎士」などからの組曲は素晴らしく、時々取り出して聴いています。

それにムターと共演したチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は最高の演奏です。
ヴァイオリン、指揮者、オケ、録音と申し分なしで、四拍子揃った名盤です。
(オイストラッフの名演が霞むほど、この曲の決定盤と言っても良いほどです。)
オマケについているコルンゴールドの協奏曲も1楽章など怪しくも甘い雰囲気が醸し出せれた素敵な演奏で、
さすが長年に渡って映画音楽に携わっていただけあって表情豊かな演奏です。
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これほどの音楽家は、今後なかなか世に出てこない事でしょう。・・・
プレヴィンさんの安らかなご冥福をお祈りしています。


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by Atelier-Onuki | 2019-03-26 20:25 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ハイティンクとヨーロッパ室内管弦楽団の演奏会から

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先日の日曜日はハイティンクとヨーロッパ室内管弦楽団の演奏会がケルンでありました。

演目はモーツァルトの交響曲38番「プラハ」と
マーラーの「子供の不思議な角笛」でした。

ハイティンクも高齢なので聴く機会があればなるべく聴いておこうと出かけました。
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ヨーロッパ室内管もアバドによって創立されてから、かれこれ38年が経過します。
あのころはヨーロッパのユースオーケストラから優秀な奏者を集めて作られた
若いオーケストラでしたが、さすが7割ほどの奏者が年配の域になってしまいました。
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オーケストラが出揃い、いよいよハイティンクの登場かと思われましたが、
会場のマネージャーらしき人がマイクを手に出てきました。

こんな時は大抵碌なお知らせしかないので「あぁ急に体調を崩したのかなぁ~」と
半ば諦めぎみに聞き入ると、なんとこのコンサートに出演してくれるハイティンクに
対するお礼と来月90歳になる旨のお祝いの言葉で一安心致しました。

やっと登場となりましたが、ゆっくりと階段の手摺を持ち、
片側には介助の人が支えていて痛々しさすら感じました。

ステージ上でも介助の人と杖をつきながら、ゆっくりと中央まで到着しました。

かれこれ3年ほど前に聴いた時はヨチヨチながらも一人で杖もなく歩いて来られましたが、
この3年間で急に老け込まれたようです。

指揮台にもハイチェアーが置かれていて何とか座れました。

それでも振り下ろされた指揮棒からは「ダ~ン!」と締まりのある響きで始められました。
バイオリンがチャラチャラチャンと刻みながらクレッシェンドして行くあたりもモーツァルトらしい優雅なで心地よい響きがかもし出されています。
テンポも小気味良くだれた感じはありません。

この曲は「フィガロの結婚」の上演に先立ってモーツァルト自身の指揮によってプラハで初演されたので「プラハ」と言う副題が付いているそうです。
「あの小さいながらも愛らしい「エステート劇場」で演奏でされていたのだなぁ~」と
想像を膨らませていました。

色んな事を思い浮かべながら聴き終えていました。
まぁ全体的には良くも悪くもハイティンクらしく、無難に纏めたなぁ~という印象でした。

このオーケストラでのモーツァルトといえば、10数年前に聴いたアーノンクールとの
29番の交響曲が思い出されます。

それは2楽章で弱音を利かせた衣擦れのようで、
この世とも思えないような綺麗な響きにゾクッとし鳥肌がザァ~と立ったのを忘れる事ができません。

さて、後半はお目当てのマーラーの「子供の不思議な角笛」です。

これはドイツの古い民謡集から編纂して作曲された歌曲集で、
その奇妙で不思議な世界観が描かれています。

それでも元々が民謡や童謡ですので、マーラーにしては深刻な部分は少なく、
とても聴きやすい曲で大好きな曲です。
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ソリスト2人の登場と共にゆっくりと介助に助けながら登場されました。
まぁそんな訳で会場は割れんばかりの拍手ですが、これに圧倒された私は小さく拍手をしていました。

唯、この曲はややこしい事に、纏まった歌曲集として一気に作曲されたのではなく、
バラバラに作曲されたあとから10曲が編纂されました。

その後、追加された曲もあり指揮者によって解釈はバラバラ・・・

数曲カットしたり、逆に加えたり、順番を変えたり、歌手もソプラノとバリトンですが
歌う曲が変えられたり、場合によっては一人で歌いきったりとややこしく、私もよく分かっていません。

一般的には「歩哨の夜の歌」から始められますが、どうも違う曲が流れてきました。
「最初はエェ?・・・」と?マークがず~と続いていました。

2曲目で「むだな骨折り」が出てきてやっと聴き慣れた曲となりました。
これはソプラノとバリトンとのコミカルなやり取りですが、表情豊かに表現しています。
それも大げさな表現ではなく、とても好感がもてます。

歌手の二人は未だ若い領域の人たちでしたが、よく通る張りのある声ながら、けして声を張り上げることがない、とても実力のある人たちだと思います。
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3曲目の「不幸な時の慰め」もソプラノがとてもチャーミングに歌い上げました。

そして私の好きな6曲目「魚に説教をするパドヴァの聖アントニウス」は
何とも奇妙な話しを不気味ながらもコミカルな異次元の世界を表現しています。

この曲はマーラー自身もとても気に入っていたようで、交響曲2番でも3楽章で全く同じテーマと音楽を引用しています。

ハイティンクもモーツァルトよりもマーラーの方があっているのか、この変幻自在の音楽を操っています。
まぁ何といってもマーラーの音楽には仕掛けも多く、うねったり、歪んだりしながらも
ハッとするようなロマンティックで綺麗なメロディも浮かび上がります。

曲はデュエットによう「美しいラッパの鳴り響くところ」を終えと所で、
なんとハイティンクは楽譜を閉じてしまいました。

ちょっと焦ったソプラノが指揮台へ、すかさず歩み寄り、
これから演奏しなければならない最後の曲のページを開きました。

ハイティンクも我に帰ったように、「おお・そうだった!」とばかり彼女の肩をトントンと叩いていました。

一瞬どうなることやらと焦りましたが、ことなく無事に最後まで演奏を終えました。

又もや割れんばかりの拍手喝さいでしたが、ステージ脇まで下がったハイティンクは
そこでもう一度挨拶をして退場しました。

普通なら拍手に答えて何度もステージに登場するのですが、
この日はオーケストラも気を利かせ彼が退場した後、
直ぐに回り近所の奏者と握手をして退場して行きました。

ハイティンクがコンセルトヘボウと2度目に来日した1968年は、
私は浪人時代で丁度ポスターの課題がでた時、
このコンサートのポスターをオーケストラのシルエットで描いて作ったのを思い出します。

この頃はコンセルトヘボウのコンサートなんて憧れ中の憧れでしたが、
如何せん浪人性には高値の花で、単なる憧れでしかありませんでした。

あれからかれこれ50年・・・長い年月が過ぎてしまいました。


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by Atelier-Onuki | 2019-02-14 00:41 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ムーティとウィーン・フィル ケルンの演奏会から

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昨夜は今シーズンのハイライト、ケルンでのムーティとウィーン・フィルの演奏会へ行ってきました。

演目はモーツァルトのフルート協奏曲1番 と
ブルックナーの交響曲7番 でした。

さすがこの組合せだけに会場は溢れんばかりの聴衆が集まっていました。

最初のモーツァルトは「クラリネット協奏曲をやってくれたら良かったのに~」と
この余り面白くない曲の選択に不満を抱いていました。

それでも割り切って、ここはちょっと優雅な気分にでも浸るかと構えていました。

小編成のオーケストラは生きいきとしたテンポで弦楽の合奏で始まりましたが、
まぁ何とその弦の柔らかい響きか・・・先ほどまでの不満はすっ飛び心地良い
気分に浸っていました。

後半はお目当てのブルックナーです。
特に7番は彼の交響曲のなかで一番好きな曲です。

モヤモヤッと霧の中から沸き立つように弦楽によって静かに弾き始められました。
それに木管群が加わり徐々に音量を増していきます。
いよいよ金管群が乗っかり最初の盛り上がりを見せます。

ムーティの指揮ぶりはたっぷりとしたテンポながらもキビキビとした運びです。
それに何といっても気持ち良く歌わせ、さすがムーティの真骨頂といったところです。

響きは奥深く重厚ながらも、深刻にならず明るいところが聴いていて心地く身を任せられます。

2楽章におけるあの天国的な弦のメロディにもウットリです。
後半、一旦ぐっと音量を落とし序々に膨らんできた音は、ティンパニーの一撃と共に爆発を迎えますが、
緊張させられていた雰囲気が一気に開放され、思いっきりその音の洪水に身を委ねてしまいます。

それに、ホルンの後で待機していたワグナー・ホルン達がいよいよ登場し、その鄙びた響きで味付けをしています。
ここでもブルックナーは如何にワグナーを尊敬していたかが伺われますが、
寂が利いた中にも、ちょっとオドケタような親しみも感じられ好きな楽器です。

トランペットのソロが特徴的な3楽章でも金管群は生きいきとして鳴らしています。
フォルテになって、ホール中に音が溢れても、なんと心地よい響きか・・・

金管が盛り上りみせ、ここでもシンバルの一撃で最高潮に達しますが、
ここでのティンパニーの連打・・・凄い・・・

猛スピードで連打しますが、ちゃんと味わいを付けこのティンパニーだけを聴いても、
一つの音楽の世界を表現しています。
連打しますが最後の一打は更に気持ちをこめ溜めを作って叩いています。
それに、何と行っても革張りのティンパニーなので、なんとも味わいのある渋い響きがしています。

不思議な弦のアンサンブルではじまる最終楽章では、颯爽とした推進力で曲は進み、
紆余曲折のメロディがあっちへ行ったりこっちへ行ったりを繰り返しながら、
フィナーレへと向かって行き、金管群のオンパレード宜しく鳴り響き、
バ~ンと最高潮になったところの一撃で幕となります。

1時間ちょっとと結構長い曲ですが、まだまだ聴いていたいなぁと、終るのが惜しまれる演奏でした。

ただ、集中して聴いていたせいか終った後はグッタリと放心状態で、
今尚、頭の中ではキラキラとした金管群の響きがキラメク鳴り響いています。


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by Atelier-Onuki | 2018-12-20 23:49 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

デュダメルとマーラー室内管弦楽団、ケルンの演奏会から

先週は月曜日から3日連続でケルンの演奏会へ行く予定でしたが、
月曜日のポリーニが延期になってしまい結局はデュダメルだけを2日連続で聴く事になりました。

それにしてもポリーニの健康状態が心配で、
5月に予定されていたブッパータールでの演奏会が6月に延期され、
さらに9月に延期、それも又ケルンも含め延期されました。

公式にはインフルエンザと発表されていますが、
世界中での演奏会をキャンセルしていて、その状態が心配されます。

さて、デュダメルとマーラー室内管弦楽団は2日間に渡っての公演で、
初日はシューベルトの交響曲3番とマーラーの交響曲4番、
2日目がやはりシューベルトの交響曲5番とブラームスの交響曲4番という組み合わせでした。
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シューベルトの交響曲3番は小さな交響曲で、
未だドイツ舞曲を大きく発展させたような未熟なところもありますが、愛らしい素敵な曲です。

それにしても18歳での作曲というは驚くばかり、しかも4楽章辺りの弦の刻み方など
やがて生れる最後の“偉大な交響曲”の楽想を予感させられます。

デュダメルもこんな地味な曲を選ぶあたり、正統派の指揮者として進んでいく覚悟の表れかも知れません。

ダ~ンと控えめに弾かれ、木管に乗ってヴァイオリンが可愛く刻み始めますが、
響きは柔らかく軽妙で、「オオ・・中々やるなぁ」と感心・・・

曲は颯爽と進んで、そこそこ長い1楽章はあっと云う間に終ってしまいました。
2楽章に入り軽妙さは変わらないのですが、ここでの楽想の親しみ易さは、
まるでドイツ舞曲が連続して発展しているようです。
3楽章も颯爽たる演奏で歯切れ良く進んで行きます。
4楽章でも勢い良く進みますがあくまでも丁寧さは失われていません。
ここでの弦の連続した刻み方など、前に書きましたが、
もうすでに最後の交響曲へ発展していくかの予感が満載です。

続くマーラーの交響曲4番もシャンシャンシャンシャンと鈴の音を伴って軽妙に始められました。
この曲は巨大な編成が多いマーラーの中では小さな編成で可愛く、かつ奇妙なところも満載の曲です。
まぁ「子供の不思議な角笛」から派生した曲で、文学的にもちょっと奇妙な内容を持っています。

それでも風光明媚な秘境アルタウス湖で楽想が練られたせいか、
随所にハッとするような綺麗な箇所も現れ天国的な響きに浸ることができます。

4楽章の歌詞の内容からか「大いなる歓びへの賛歌」なんて副題が誰かによって付けられています。

デュダメルの演奏はここでも軽妙かつ柔らかい表現で進められていきます。
テンポも心地よいし、ちょっとしたリタルダントなどテンポを動かすシーンでも自然体で嫌味がありません。
オーケストラもさすがにマーラーと冠しているだけに手馴れた感じで、
自信を持って演奏しているようです。

それにしてもこのオーケストラの管は木管も金管も中々の腕前です。

ちょっとした新しい工夫も仕掛けられていて、例えば4楽章の歌唱が一旦終ったあと、
フルートのソロが浮き上がりますが、ここでは息を半分ほど抜けるように吹くので、
まるで荒涼とした風景に風が漂っているような感じがします。

これは後に作曲される「大地の歌」でも似たような効果をもたらし、
東洋的な侘びや寂の世界を表現しているかのようです。

軽妙な中にも味わいのある演奏でとても楽しく聴く事ができました。

それにこの日の演奏会は、嬉しい事に終演後ケルンの地ビール「Kölsch」を振舞ってくれていました。
乾いた喉に、この軽いビールは助かります。
グビグビと一気に2杯も頂きました。

さて、2日目の演奏会はシューベルトの交響曲5番とブラームスの交響曲4番の組み合わせです。

この演目も中々の正統派・・・昔のウィーン・フィルの演目を彷彿させるようです。

シューベルトの5番は19歳での作曲にも関わらず既に完成された作品で、
5月ウィーンに吹く爽やかな風を連想させてくれます。
演奏も軽妙かつ爽やかで心地よい一時でした。

後半はブラームスの4番・・・彼の晩年の交響曲で古典的な手法ながら、
新しい試みもされていてリズムや楽器間のアンサンブルも複雑で難しい作品です。
しかも内容的にも晩年の深い感慨が込められているので、その辺をどう表現するのかも難しいところです。

デュダメルはここでも若干速めのテンポで軽妙な表現です。

1楽章の複雑に楽器が絡み合うシーンではちょっと乗り切れなかった部分もありましたが
、シミジミ歌い上げられた2楽章、そしてトライアングルを伴った勢いのある3楽章、
そしてもっともシミジミと歌われている4楽章へと入りました。

バッハの楽想からヒントを得て書かれた聴きどころ、
シャコンヌの部分ではフルートのソロが丁寧にシミシミと歌い上げました。

デュダメルはこの曲でも軽妙かつ爽やかに聴かせました。

「この曲はもっと渋く重厚な響きで聴きたい!」と思うのは普通なのでしょうが、
このオーケストラの発足当時からアバトと共に目指した‘室内楽的なまでの精密なアンサンブル“を考えると、
これはこれで充分満足の出来る演奏だったと思います。

何はともあれ、とても良く鍛えられた演奏レヴェルや、
音楽をするというバイタリティに溢れた姿勢は充分伝わってくる好感のもてる演奏会でした。

この夜もビールが振舞われるのを期待して、そっと‘海苔ピー“を忍ばせていたのですが、残念ながらアテが外れてしまいました。



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by Atelier-Onuki | 2018-09-20 21:10 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ラトル ベルリン・フィル ケルンの演奏会から

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昨夜はケルンでラトル指揮ベルリン・フィルの演奏会がありました。

今、最高の状態にあるにも関わらず、彼は今シーズンで音楽監督を辞任しますから、
聴ける機会があればなるべく行くようにしています。

演目はWidmannと云う作曲家のダンス曲で、どうもベルリン・フィルから委託されたものらしいが、
ポップス風でさっぱり良さが分からなかった曲と、
これまたLutoslawskiという作曲家でベートーヴェンを意識して作曲されたらしい交響曲の3番でした。

ババババンと鳴る最初のテーマが、ベートーヴェンの運命の頭、
ジャジャジャジャ~ンの4つのモチーフからきているそうですがサッパリ分かりませんでした。

処で、この曲の後半に入ってポディウム(ステージ後ろの席)でザワザワとした動きが・・・
どうもこの辺に座っていた女性に異変が起こったようです。
周りにいた人たちやホールの係員によって抱かれながら退場していきました。

私の座っていた近くからも2・3人の紳士がサッと向かって行きました。
恐らくお医者さんなのでしょうか・・・
この辺はさすがドイツ、未々正義感や使命感はしっかり残っています。

さあ気を取り直して、後半はお目当てのブラームスの交響曲1番です。

ティンパニーの連打を伴って弦群が緊張感を保ちながら堂々と弾き始められました。

ラトル氏はよく何か新しいことに挑戦するところがあって、キビキビとした若干早めのテンポで活気があるのですが、
ここではむしろ落し気味のテンポでゆったりと鳴らしています。

この辺はブラームスという事で、さすが重厚な印象を与えようとしているようです。

途中、弦や木管が絡み合い、複雑なテンポで構成されている所でも、
アンサンブルは流麗な動きで見事にハモっています。
いやぁ~さすがベルリン・フィルと思わず唸ってしまいそうです。

柔らかな響きで2楽章が静かに始まりました。
その甘いメロディにウットリとして聴き入っています。

後半に入り、いよいよヴァイオリンのソロが弾きはじめられました。
今日のコンマスはシュタブラーヴァさんです。
ソロの響きは浮き上がってきますが、その柔らかくて清涼な弾きぶりは決してデシャバラない上品なバランスです。
木管とのやり取りも甘く夢見心地で、もうウットリとして聴き入るしかありませんでした。

フィナーレに差し掛かりヴァイオリンのソロがス~と浮き上がって来ますが、
どこまでも滑らかに引っ張られた響きは静かに消え入るように終りました。

3楽章では軽やかなメロディ・ラインに乗って木管群が煌びやかにくり広げられます。

クラリネットからフルートに、そしてオーボエと受け継がれながら展開して行きますが、
この楽器間の受け渡しが実にスムース、何時何処で吹きだしたのか分からないほど滑らかです。
それでいてソロで吹いている木管はフワッと浮き立ち、周りの楽器たちが絶妙に絡み合っています。

あっという間の3楽章が終わり、間髪を入れずに4楽章へと引き継がれました。

低音域の弦がグ~ンと盛り上がったところにティンパニーの一撃・・・

にわかに緊張感が高まって、複雑なメロディーが交差し今度はティンパニーの連打で、
一瞬の静寂が訪れると、弦群のトレモロに乗ってホルンのソロが朗々と響きます。

ウ~ン、上手い!!! 惚れ惚れするような甘くロマンティックな旋律です。

ここでも一旦ピッチカートで見切りをつけると、いよいよメイン・テーマのメロディーが弦群によって浪々と弾かれますが、
まるで柔らかなビロードの絨毯の上を転がっているような心地よさで、自然と体が音楽にあわせて揺れているようです。

曲は盛り上がりブラームス特有の複雑なメロディーが折り重なり、クライマックスを迎えました。

フィナーレはスピード感に溢れていますが、アンサンブルは一糸乱れず、
音量も絶妙のバランスが保たれ、フォルテシモでもあくまでも柔らかく心地よい響きです。

ジャン・ジャン・ジャン・ジャ~ン、と格好よく閉じられました。

いや~久々に良いブラームスを聴かせてもらいました。

今月末にはいよいよベルリンで彼のグッドバイ・コンサートが予定されています。

その直後には最後の演奏会があってマーラーの6番で幕を閉じるようです。
因みに、アバドの最後もマーラーで、その時は7番でした。

さて、終演後はいつも通り駅裏の屋台へ直行、今宵のビールは格段に美味しく感じました。



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by Atelier-Onuki | 2018-06-10 00:04 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ダニエル・ハーディングとウィーン・フィルの演奏会から(ケルン)

昨夜はハーディング指揮でウィーン・フィルの演奏会があったのでケルンへ向かいましたが、
開演が19時と何時もより1時間も早いのでバタバタと出掛けました。
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演目はドビュッシーの「ペリアスとメリザンド」から組曲と
メインはマーラーの交響曲6番でした。

ウィーン・フィルの演奏会は何時も混んでいるのですが、特に年配の方々が目立ちます。

席に着くとステージにはこれ以上入らないほどの椅子が並べられていて、
如何に編成が大きな曲かが伺われます。

最初のドビュッシーから既にそこそこの奏者が入っていて、
「この曲でこれだけの人数がいるのかなぁ?」と思っている中、静かに始められました。
オペラも「印象派」と言われ具体的な状況表現を避け、
ちょっと抽象的に描いているのでいまひとつ掴み所がないのですが、これは組曲になっても同じことです。

余り盛り上がらない同じような旋律が繰り返され大編成の金管群が吹き出しても、
全く大きな響きは出さず、グッと押さえられています。

チューバも入っていますが、ほんのちょっとブファとサビを利かす程度で
鳴ったか鳴らないか分からないほどです。

それでもヴァイオリン群が甘いメロディを奏でている時など、
さすがウィーン・フィルだけあって、ウットリとするような柔らかな響きです。

「こんな所はあの自然光が差し込んでくるムジーク・フェラインの昼間に聴いたら気持ちいいだろうな!」と
想像をしていました。

まぁ結局は山場らしき所もなく、静かに終ったか終っていないのか分からないまま終了していました。

さて、休憩後はお目当てのマーラーです。

管弦楽だけの曲では一番大きな編成なので、これでもかとばかりの奏者が登場しました。
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ザン・ザン・ザン、ザザザン・・・と勢い良く弦群と打楽器によってバリッと刻まれました。
これを受けてヴァイオリンが甘いメロディを面々と奏でます。

イヤァ~さすがウィーン・フィルです。冒頭からこんな柔らかい響きを聴かされるとウットリしているだけです。

ハーディングも溌剌とした棒運びですが、慌てるような所がなく堂々としたテンポです。

曲は複雑に絡み合い万華鏡のようにキラキラと突き進んで行きます。

打楽器などは忙しく、二種類ほどの打楽器を掛け持ちし、
一番右端でドラ担当の奏者などは忙しくステージバックで鳴らすカウベルや
鐘のシーンの度に行ったり来たりしています。

曲はより複雑な絡み合いをみせ最強音の一撃で長い一楽章を閉じました。

打って変わって2楽章は穏やかにヴァイオリンの甘い旋律で静かに面々と奏でられ始めました。

この面々とした進行はこの楽章の最後までくり広げられ壮大な中にもマーラーの充実した精神状態が伺われます。

徐々に盛り上がって行った曲はグッと静かな響きへと移りこの楽章を終えました。

打楽器を伴って弦楽器群がガリガリと行進曲風に刻み、3楽章が始められました。

途中絡んでくる金管楽器などはちょっとグロテスクな表現でサビを利かせています。
チューバのソロが入るところなど空ろな感じで何処へ行くのだろうかと思いきや、
急に甘いメロディで木管が答えたりと支離滅裂です。

それでもホルンが甘く吹く辺りなどはアルプスの光景を連想させ、
「ああやっぱりこの人は山が好きだったんだなぁ~」と思わせます。

ハープにチェレスタを伴いボァ~ンと不思議な雰囲気の響きで4楽章は間髪を入れずに始まりました。

曲はあっちへ行ったりこっちへ行ったりと定まらないまま、ホルンのメロディを頭に
段々とメインテーマが序々に現れ出し打楽器も加わり盛り上がりを見せるのかと思ったら、
拍子を抜かれたように又、グッと落ち着き・・・と

やっとスピードも増してきてここでも万華鏡よろしく色んなメロディが絡み合います。

曲も後半に入りいよいよ、お待ちかねのハンマーをひっぱたくシーンが訪れます。

さっきまでシンバルを叩いていた奏者が厳かに持ち上げたハンマーは特注なのでしょうね、
一般的な木槌の4・5倍位あろうかと思われるほど大きなものです。

そして一旦溜めを作ってからダン!とタイミングよく叩き降ろしました。

曲はまた空ろになり紆余曲折を繰り返しながら2回目のハンマー・シーンが訪れました。
ここでもピタッとタイミングがあった一打・・・

奏者も緊張していたのか叩き終ったあとは、崩れるように座り込み表情は安堵からか呆然とした顔をしていました。

その後も未々、雑然とした曲はあっちへこっちへとウネリ、一旦グッと静まり返り、暫くの緊張の後、
ジャ~ン!大爆発、ボン!とピチカートで終了しました。

イヤァ~曲が支離滅裂だけに文章も纏まらないものになってしまいました。

演奏は全体的にボリューム満載でヘビーでした。

特に金管などは深い奥行きと、ウィーン・フィル独特の良い意味で荒々しさもあって余計ヘビーに感じました。

もう終った後はグッタリです。
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この曲は3月にラトルとベルリン・フィルでも聴いていて、どうしても比較をしてしまいます。

ベルリン・フィルでの演奏は精密さの極みで、アンサンブルは完璧だったし、
何一つ濁りのない清涼な響きには威厳を感じるほどでした。

この複雑な曲にも関わらず理路整然とディティールまで磨き上げた演奏は
曲の全体像を透して見てとれるような圧巻の名演奏でした。

まぁこの辺は常任と客演の違いもあるでしょうし、演奏の精度を重視しているベルリン・フィルと、
むしろ豊かな音楽性を大事にしているウィーン・フィルの違いが出たのかも知れません。

それにしても歳のせいか最近はこんなヘビーな曲を聴くとグッタリと疲れてしまいます。


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by Atelier-Onuki | 2017-09-16 01:24 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

「パッパーノとサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団」エッセンでの演奏会から

「パッパーノは面白いよ・・・」と誰かから聞いたことがあったので楽しみにしてでかけました。
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それとサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団も昔オペラのCDで親しんでいて、
その可愛らしい名前には好感を持っていました。

音楽の守護神でもある聖チェチーリアの名前を冠するこのオーケストラは、
イタリアでは数少ない純粋なシンフォニー・オーケストラですが、
150年以上の歴史がある由緒正しきオーケストラです。

同じ名前を持つ世界最古の音楽院サンタ・チェチーリア国立アカデミアの出身者を
中心に構成されています。

唯、紀元2.3世紀、この聖チェチーリアを巡っては悲しい奇跡の物語がありました。

音楽院の近く彼女の実家跡に建てられた教会には、
棺が祭られていてその上にはマデルノ制作による大理石の彫像が横たわっています。
遺体は千数百年後に棺が開けられたにも関わらず、
腐敗がなく生々しかったそうで、マデルノはそれを忠実に再現したそうです。

少女だったせいか若干小振りに感じますが、
手の表情など未だ血が通っているかのように、柔らかく温かみすら感じました。

さて、話しが横道に逸れすぎたので本題に戻します。

演目は
ロッシーニのオペラ「コリントの包囲」から序曲
チャイコフスキーのピアノ協奏曲 (ピアノ: ユジャ・ワン)
レスピーギ: 「ローマの泉」と「ローマの松」

この日は開演に先立って30分前からパッパーノのレクチャーがありました。

オーケストラ団員も7・8名入っています。
話しは主にレスピーギの「ローマの松」をメインに進みました。

先ず、彼が作曲した当時のイタリアはプッチーニを初めとするヴェリズモ・オペラの全盛期で、
イタリア人の心に流れるオペラへの熱い情熱に対抗して、オペラ以外の曲を発表するのは大変な戦いだったと。・・・
彼はザンクト・ペテルスベルクの歌劇場でヴィオラを弾いていた当時に、
リムスキー・コルサコフから作曲を習ったので、管弦楽法に長けた教えを受けました。

この「ローマの松」は光輝くローマの一日を表現していて最初の「ボルゲーゼの松」では,
朝この素敵な庭園でキラキラとした太陽のもと遊ぶ子供たちの情景が描かれていますと。・・

「これはイタリアの音楽ですか?」との司会者の問いに、「カタコンバの松」の一節を演奏し、
「ここなどちょっとドビュッシー風だし、ヨーロッパ音楽とも言えるでしょう。・・・
でもやっぱりイタリアの音楽だなぁ~」と笑いを誘っていました。

「ジャニコロの松」では「ここは私の一番好きな箇所なのですが・・・」と最後の静かに木管が奏でる部分を演奏しました。 
(私もここが好きです。)

さて、コンサートはロッシーニの序曲から軽快に始まりました。
このオペラは決して喜劇ではありませんが、軽妙で転がるようなリズムの乗りは
やはりイタリアのオーケストラならではの演奏です。

ウィーンを初めドイツの主要歌劇場のオーケストラはレヴェルが高く、素晴らしい演奏をしてくれるのですが、
唯一不満があるとすればイタリア物のオペラにおいて、この弾むような乗りに乏しい事でしょうか。・・・

2曲目はチャイコフスキーのピアノ協奏曲で、「イタリアのオケでチャイコ?」と
それにソリストも最近ちょっと写真は見かけたことがあるけど若い中国人女性。
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しかも出てきた彼女は「オッ!」と思うほどの衣裳・・・ラメ入りの黒いワンピースは露出度も高く、
超ミニスカートにピン・ヒール・・・こりゃキャパクラに来たような錯覚に陥ります。
唯、露出されている肩や腕は、よく鍛えられた筋肉が盛り上がっています。

それにしてもヴァイオリン群の女性奏者たちは競うように肩が露出したドレスを着ていて、
こんなのはドイツ辺りのオーケストラでは見たこともなく、何だか微笑ましさすら感じました。

ポポポポ~ン、ポポポポ~ンとホルンが高らかに鳴る、あの有名なテーマは浪々と高らかに響き、
「ああ明るいな~」、・・・「こりゃイタリアの燦々と輝く太陽の下で鳴り響くチャイコフスキー」 ・・・
この浪々と響くオーケストラをバックにピアノが対抗しますが、「響きが滑らか・・・」
全く力んだりしないで、むしろ柔らかく流れるような節回しです。

それでいて、芯はしっかりとしたタッチでピアノの音が浮かび上がっています。

「おう、こりゃちょっと良いぞ・・・」と姿勢を正し直して聴き入っていきました。

一楽章の後半、カデンツァの部分では更に流麗な指運びで、ちょっと崩したように弾くあたりは、
何だかジャズの即興を聴いているような趣で益々引き込まれました。

ピチカートで静かに始まる2楽章は木管が奏でる甘いメロディにピアノも静かに絡んできます。
そのロマンティックで甘い雰囲気のなか、今度はピアノが伴奏にまわりチェロが切ないメロディを奏でるあたりでは、胸に熱いものすら感じました。

ティンパニーに一打に弦がガリガリと刻み、一気に3楽章へと突入しました。
スピードはドンドン上がり一気呵成に曲は進んでいきます。

もうオーケストラはノリノリの演奏、ピアノも負けじと気持ちが良いほどのスピード感で進みますが、決して荒くなる事はありません。

最後のコーダはどの様に弾くのか楽しみに待っていました。
猛スピードはそのままに、最後の早いパッセージをものの見事に弾ききりました。

弾き終わった瞬間、オーケストラ部分は残っているにも関わらず安堵感からか彼女は鍵盤に指を置いたまま「ニッコリと笑いました。」・・・

いや~・・・失礼しました。・・・それほど期待をしてなくて済みませんでした。

こんなチャイコも充分ありというよりも、とてもとても素晴らしい演奏でした。
彼らがあえて取り上げただけの内容のある、気持ちの良い独特のチャイコフスキーでした。

まぁチャイコフスキーもローマ賞を得てイタリアにも行っていますし、
その後に作曲した「イタリア奇想曲」なんて明るい曲ですから。・・・

喝采は鳴り止まぬなか、コンマスに促されてアンコール曲を弾きました。
先ほどの乗りのまま「カルメン幻想曲」(これってホロヴィッツ編曲だったか)
演奏が終るとこの技巧的な演奏に更に大きな喝采が止みません。・・・

また、またコンマスに促され、ピアノの前に座りました。
こんどはモーツァルトの「トルコ行進曲」ですが、途中から編曲された部分に突入し、
益々彼女の技巧の凄さを示しました。
聴衆はほぼ全員スタンディング・オベーで、もう割れんばかりの喝采でした。

まぁ一般的な聴衆やプロモーターは喜んでいると思いますが、彼女は技巧だけでなく、
ちゃんとした音楽性の持ち主だと思いますので、アンコール以外ではこのような曲には取り組んで欲しくないなぁと、オジサンは心配になりました。
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さて、メインは「ローマの泉」、と「ローマの松」です。
これはレスピーギがここの音楽院の先生をしていた位ですから彼らにとっては得意中の得意曲です。

もう多くをここで語らなくても、その素晴らしさは知れている処だと思いますが、
特に「ローマの松」は素晴らしく、あの幹がス~と延びた上の方だけが茂った柔らかい独特の形をしたローマの松を思い浮かべながら聴いていました。

キラキラと太陽が煌く庭園で遊ぶ子供たちの「ボルゲーゼの松」、

厳かな「カタコンバの松」、ここでは客席の外から聴こえてくるトランペットのソロが、
音のパースペクティヴをしっとりとした雰囲気を醸しだしていました。

そして「ジャニコロの松」では何といっても最後の方で、静かに奏でる木管に絡むよう入るナイチンゲールの鳴き声が、
シンミリとしながらもロマンティックな夕方の雰囲気を演出していました。

泣き声を遮るように遠くから打楽器と金管によって行進曲風のリズムがかぶって「アッピア街道の松」が始まりました。

アッピア街道を行く、いにしえのローマ軍の行進に思いをはせていますが、段々と近づいてきた行進は、いよいよ目の前にと差し掛かります。

ステージ中央の上階にはブッキーナといわれる古代ローマ軍が用いていたといわれる金管が二人、両サイドにもトランペットが二人づつ陣取って立体感を出しています。
オーケストラは最高潮に達し全奏のジャ~ン!!で閉じられました。

盛り上がる曲だけに、もう聴衆の興奮は最高潮で割れんばかりの喝采でした。

ここでもアンコール・・・「ちょっと雰囲気の違う曲を」と一声かけ、始まったのはシベリウスの「悲しきワルツ」でした。 
厳寒の国からの音楽ですが、この明るい太陽の国のオーケストラは明るいなりのも丁寧で爽やかな表現・・・シベリウスもイタリアにやって来たのでしょうか。・・・

拍手喝采にコントラバスのオジサンが更に煽るがごとく、ボンボンとコントラバスを叩いて響かせています。 さすが明るい国のオーケストラ・・・こんな光景は初めてです。

パッパーノがステージ脇から歩いて出てきた途中から、パラパン・パラパン・パラパパパと「ウィリアム・テル」の序曲の最後スイス軍の行進が鳴り始めました。

オーケストラも指揮者もノリノリで自由に楽しんでいるようでもあります。
余りにもポピュラーな曲ですが、意外と演奏会で聴く機会がありませんので、こちらも理屈抜きで楽しく聴かせてもらいました。

この日は選曲も良いし、盛りだくさんの演目で大いに楽しませてもらいました。

彼らの演奏会があったら、また聴きたいなぁ~と思わされました。
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by Atelier-Onuki | 2017-05-18 22:33 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

「デュトワとロイヤル・フィル」 エッセンの演奏会から

先週末はエッセンであったデュトワとロイヤル・フィルの演奏会に出掛けました。

演目は
ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」
メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」 V.ルノー・カピュソン
ドヴォルザーク「交響曲9番」 新世界から
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デュトワの思い出は、もう20年ほど前にアムステルダムで聴いた
コンセルトヘボウとの共演によるラヴェルの「ダフニスとクロエ」でした。
それはそれはキラキラとした演奏でしたが、オーケストラのいぶし銀のような響きは決して派手になることはなく、
素晴らしかった演奏が深く印象に残っています。

この「ダフニスとクロエ」が当初予定されていたので行く事にしたのですが、
どういう訳かドヴォルザークの9番いわゆる「新世界から」に変更されてしまいました。

「まぁドヴォルザークも良いか!」と開き直って聴きにいきました。

会場はアレッと思うほど閑散としていて、最上階席は全く人を入れていませんでした。
デュトワではそんなに集客が出来ないのでしょうか・・・
先日のラトル、ベルリン・フィルの超満員との差は歴然としていました。

最初のベルリオーズはデュトワの得意曲の一つでもあるので、
やはり手馴れたものでキラキラと輝くような演奏で楽しめました。
それにしてもベルリオーズって面白い作曲家です。

二曲目のメンデルスゾーンはヴァイオリンにフランス人のカピュソンを起用し、
フランス系スイス人のデュトワとは同じような演奏スタイルなのでしょう。
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事実、演奏され始めた音色はやや軽めでニュートラルな印象です。
ヴァイオリンも濁りのない繊細な弾き方で好感がもてます。

下手な感情移入やポルタメントなど一切なく素直に曲が進んで行きます。
オーケストラも正攻法で上質の音楽を楽しませてくれました。
ヴァイオリンの線の細さとか、堂々とした巨匠風の表現はないので、
やや物足りなさも感じましたが、それは贅沢というものでしょうか・・・充分立派な演奏でした。

唯、後から知ったのですが、彼はアイザック・スターンが愛用していたグァルネリを使っているそうで、
これだったらもう少し芯の太い表現もできるのでは・・・と思ってしまいます。
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さて、メインはドヴォルザークの9番です。
デュトワとロイヤル・フィルであえてドヴォルザーク? と思っていましたが、
いざ演奏が始まってみると、どうしてなかなか聴き応えのある演奏です。
ニュートラルな表現ながらツボを得た、聴きやすい演奏でドンドン引き込まれて行きます。

二楽章の有名なイングリシュホルンが吹くメロディに木管たちや、
衣擦れのように弦が絡まってくる辺りでは、不覚にもウルッと来てしまいそうになりました。
三楽章や終楽章では金管群が待ってましたとばかり活躍するシーンが目立ちますが、
ここでもバランスのとれた綺麗なハーモニーが保たれ気持ちよく委ねることができました。

「新世界から」と言えば私は真っ先にケルテスとウィーン・フィルの演奏を思い出し、
何かとこの演奏と比べてしまって、辛めの評価をしてしまいがちですが、
この日の演奏は決して熱い表現ではありませんが、とても上質の素晴らしい演奏でした。
彼らがこの曲を選んだのも納得ができました。

アンコールにはドヴォルザークに縁のあるブラームスの「ハンガリー舞曲の1番」、・・・
オケもノリノリの演奏でしたが、まぁこれは余興として楽しめました。



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by Atelier-Onuki | 2017-05-01 22:16 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

アルベルト・ゼッダさんとクルト・モルさんの思い出

昨日と今日にかけてデュッセルドルフの歌劇場に縁のある音楽家が二人も相次いで亡くなりました。

一人は指揮者のアルベルト・ゼッダさんともう一人は歌手のクルト・モルさんでした。
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私がデュッセルドルフへ移り住んだは1985年だったのですが、
この頃のデュッセルドルフ歌劇場には未だ何人かの大物指揮者が出演していました。
(昔はベームやクライバーが指揮したこともあったそうで、その頃が羨ましい・・・)

それに正式な名称が「Duetsche Oper am Rhein (ライン川沿いドイツ・オペラ)」と言って
何だか憧れていたベルリンの「Deutsche Oper」に似ていて嬉しく思ったことでした。

中でもレコードで聴き親しんでいたアルベルト・エレーデがいて「リゴレット」など良く聴きに行ったものでした。

ドイツ物ではハンス・バラットやペーター・シュナイダーなどがいて本格的なドイツ音楽を聴かせてくれました。

イタリア物は先ほどのエレーデと昨日亡くなられたゼッダさんでした。

特に彼はロッシーニ研究で有名な方で彼の研究成果を反映したゼッダ版があるほどです。
(どこがどう違うのか私には分かりませんが・・・)

ロッシーニの生誕地ペーザロではアバドと協力して「ロッシーニ・フェスティバル」を主宰し、
一時期ちょっと人気が落ちかけていたロッシーニの再評価に尽力され、
「ロッシーニ・ルネッサンス」と言われるほどに人気が復活しました。

ロッシーニの死後、完全に忘れられていた「ランスへの旅」や「湖上の美人」などの再演にも大きく貢献されていました。

私は観た公演は「チェネレントラ(シンデレラ)」でその小気味の良いリズム感や軽やかな節回しなど、
如何にも本物のロッシーニを聴かせてもらった感じで大いに感心したことを思い出します。

それにこの演出が素晴らしい。

それは何とかの天才演出家ジャン・ピエール・ポネル、装置も自らデザインしたもので
切絵風の軽やかな装置は、ロッシーニの軽妙な音楽にピッタリとマッチしています。
演出はもう当然納得の一言で、コミカルな動きと軽やかな振り付けに気品まで漂って何度観ても飽きない演出です。

これはミュンヘンのシュターツ・オーパーやチューリッヒのものと同じものです。

そんな中1986年に芸術監督が変わりハンブルクから実力者クルト・ホレスがやってきました。
さすがこの人は人派が広く、新監督就任記念として、その頃活躍していた一線級の歌手を集め特別公演を開催しました。

5演目を15回ほどの公演を、それはあっと驚くような陣容でコトルバシュを初めポップにグルベローヴァ、
それにバルツァといった女声歌手にアライサ、コロ、カップチッリ、ベリー、モルといった男声歌手陣でした。

ゼッダさんが指揮をした「チェネレントラ」もその一つで王子にアライサ、隠者にベリー
それにチェネレントラにはバルツァと云った歌手陣で、これはウィーンあたりの大劇場でも揃わないほどのキャスティングです。

その上、劇場が大きくないので、まぁなんと良く声が通ること・・・これは大劇場では味わえない贅沢な公演でした。

バルツァなど堂々としていて義理のお姉ちゃん二人に虐められるのですが、
何とも動じない雰囲気でむしろお姉ちゃん二人がオロオロしていて思わず微笑んでしまいました。

ここでもゼッダさんの指揮は手馴れたもので、素晴らしいロッシーニを聴かせてもらいました。

さて、もう一人のモルさんもこの公演に参加されていて、シュトラウスの「バラの騎士」にオックス男爵の役で出演されていました。
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この頃のかれは大劇場でしか歌っていませんでしたが、昔この歌劇場に出演していた縁で出てくれたのでしょう。

これも予算があった昔の演出で、オットー・シェンクによるオーソドックスな王道演出です。
モルさんの歌唱、演技も堂々たるもので、理想的なオックス役を演じておられました。
特に2幕目での聴き所、バス歌手が出せる一番低い声を長く伸ばす所も見事に豊かな響きで聴かせてくれました。

デュッセルドルフの歌劇場もかつての財産的価値がある演目や演出を復活させてもらいたいものです。

また、二人の大物音楽家が亡くなり寂しくなりましたが、
ゼッダさんとモルさんのご冥福をお祈り致します。






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by Atelier-Onuki | 2017-03-09 02:56 | 音楽 | Trackback | Comments(0)