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ヴェルディ「運命の力」の公演から

先週からクリスマス休暇に入り、今はデュッセルドルフに戻ってきてボッーと過ごしています。

二週間前に聴いた「大地の歌」が余りにも素晴らしかったので、その頃からボッーとしている状況はなんら変らないのですが。・・・

暫く音楽も聴きたくなかったのですがチケットを入手していたこのプレミエの公演日がやってきました。
ミュンヘンのオペラは通常二ヶ月前に前売りが始まるのですが、
今回の様に人気絶頂のカウフマンなどが出演する場合は書面で申し込みます。
選出方法は分からないのですが取得できたら自動的に銀行から金額が引き落とされチケットが送られてくる仕組みです。

そんな訳で、折角カウフマンが聴けるので重い腰を上げて出かけました。

まぁ内容はドロドロした話で、そこまで運命に操られるのかと、そのシツコイ執念にはウンザリしながらも、
さすが音楽はヴェルディですし聴きどころも満載で楽しめるものです。

それにこの序曲が素晴らしい、・・・
これを聴きたさに暫く色んな公演を追っかけたことがあったほどです。

そのキッカケになったのはケルンで聴いたムーティとウィーン・フィルの公演でした。
この日はハイドンとスクリャービンのシンフォニーを演奏した後に、アンコールとしてこの曲が演奏されました。
アンコールですから事前に何の曲を演奏するのかは分かりません。

冒頭のファンファーレ三連音が鋭く研ぎ澄まれた響きで見栄を切った瞬間、恐ろしいほどの静寂が続き、
エッ何だろうこの緊張感はと唖然とするばかりでした。
意識的に取れるだけ長く続いたフェルマータにもう一度三連符が被ると、
緊張感あふれる刻みで弦楽群がグイグイと突き進んでこのドラマチックなオペラの内容を予感させます。

この全体を包む緊張感、それに高揚感は演奏している彼らにも予想が出来なかった程で、
オペラの序曲であることを忘れさせ、あたかも内容の深い大曲を聴かされたような感動に包まれました。

こんな演奏を聴かされたら又聴きたくなるのが人情です。
その後このオペラを初演したペテルスブルグ歌劇場のゲルギエフもウィーン・フィルとこの曲を取り上げましたし、
メータが振ったウィーンでのオペラ公演や最後は何とムーティがもう一度ウィーン・フィルと演奏する機会があったので聴きましたが、
残念ながらこのケルンでの衝撃的な演奏を超えるものには出くわせませんでした。

いや、思い出しただけで興奮してきたので、今公演とは関係のない事を長々と書いてしまいました。

全体としては歌手も揃っていたし、指揮者のアッシャー・フィッシュもキビキビと締りのある指揮ぶりで
この長いオペラにも関わらず最後まで緊張感をもって演奏していました。
処で、このイスラエル人指揮者、直訳したら「灰まみれの魚」とちょっとユニークな名前ですね。

演出はMartin・Kušej(クーゼフ?チェコ名で良く分かりません)、
オーストリア出身の演出家でブルク劇場を初め長らく演劇の演出をしていた人らしく、やはり一筋縄では行かない手法でした。

以前もここのオペラでの「ルサルカ」では鹿を殺すシーンがあって物議を醸しだし、
とうとう初日までには変更を余儀なくされた経由もありまいた。

この演出も時代をほぼ現代に設定し、衣装も今日風、兵士たちも迷彩服に自動小銃と今日そのままです。
一幕め最後の場面では争う積もりがない意思表示の為、アルバーロが床に落とした銃が暴発し、
偶然命中してしまったお父さんが死んでしまいますが、そのシーンではレオノーラの兄にあたる役者が最初は子供で
パニック状態の中、舞台の袖に出たり入ったりする度に段々と大きく成長して行き幕切れではすっかり大人に成人していました。
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そして、二幕目カーテンが開くと中年までに成人した男性(ドン・カルロ)がお父さんの脇に座っていて、
相当な時間の経過を上手く表現していました。
唯、このお父さんはズート横たわったまま放置されていて、
あれだけお父さんの事を思うが故に復讐に生涯を捧げた割りにはおろそかな扱いをされていました。
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三幕目の戦場でのシーンから物語は複雑に展開して行きますが、状況の説明的な演出も上手くスピーディに表現され、
この余りにも偶然が重なっていく展開も不自然な印象を与えませんでした。
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そして、この数奇な運命の糸口となってしまう、僧侶の役には再びお父さん役だった歌手が登場し、
この悲劇の原因となった役と再び結びつける結果となってしまう役の象徴のような存在となっていました。

普通ならば絶対に会うことなどなかった三人が最後に結び付けられ、
復讐の鬼と化した兄は断末魔にも関わらず妹のレオノーラすら刺してしまいますが、
このシーンではびっくりするほど血が吹き飛びます。

この悲劇オペラの象徴のようなシーンなのでこの様な演出になったのかも知れませんが、
我々音楽ファンはあくまでもオペラと云うジャンルとして観に来ていますので、
ここまでリアルな表現が必要だったのか、ちょっと疑問に感じました。
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歌手陣はカウフマン初め良く歌いましたし、演技も熱のこもった力演でした。
特にレオナーラ役のアンニャ・ハルテロスは声に張りがあり、フワッと抜けるような高音の伸びが素晴らしく大きな喝采を浴びていました。
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ドラマの内容は重くて、「そんな事ありっこないよ。・・・」と思いながらも、
さすがヴェルディだけに音楽には感心しながら彼の作品にしては長い上演時間でしたが、
最後まで飽きずに集中して聴くことができました。

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by Atelier-Onuki | 2013-12-31 02:02 | Trackback | Comments(0)

「クリスマスのご挨拶」

このブログを見て下さっている皆様、クリスマスおめでとうございます。
こんな書面でしかご挨拶ができませんが、時々ここへ訪問して頂きありがとうございます。
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今年もあと残り僅かとなりましたが、皆様におかれましては、楽しく素敵なクリスマスと
来る新年が良い年でありますよう、お祈りしております。


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by Atelier-Onuki | 2013-12-24 17:15 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)

「家内からの便り」・・・

先日の日曜日、ウィーンから帰って来たら、ウィーンにいた家内からのクリスマス・カードが届いていました。
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フムー複雑なシチュエーションです。
実はお互いに何の相談もなくウィーンへ行っていたのですが、それが余りにもタイミング良くと云うか悪くと云うか、
私の帰った次の日に家内がデュッセルからやって来て、一週間滞在していました。
そして私が又土曜日の夕方に着いた日には家内はもう帰ってしまっていると云う状態でした。

イヤ~すれ違い夫婦もここまですれ違うと笑いが出てきそうです。

クリスマス・カードは三枚が折りたたまれ、開くとクリスマス市のパノラマ写真が出てきました。
このシーズン、クリスマス市はヨーロッパではあちこち街の広場に出ています。
ドイツではニュルンベルクが有名でワザワザこれを見に多くの観光客が訪れています。
ミュンヘンでもそこそこ大きな市が市役所前に立ち大勢の人で溢れています。

このウィーンの市は久しぶりに見たのですが、それは市役所とブルク劇場の間にある広場で開催され大きくて豪華なものです。
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特にここの市は広場にある大きな木に付けられたボンボリの電飾が綺麗で雰囲気があります。
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初めてヨーロッパでのクリスマス飾りを見た時は、電飾など日本やアメリカの様に豆球で飾られたゴージャスな物ではなく、
普通の電球でそれは愛想もないほど素朴すぎてガッカリしたものでした。
唯、見慣れてくるとこれはこれで中々味わいがあって良いものだなぁと感じるようになって来ました。
今回のウィーンの電飾は豪華で、色とりどりの電飾に混じって、白くて小ぶりのものは
上から下へとドンドン動いていて雪が降っている感じを出していました。
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それに人出の多い事、もう銀座の歩行者天国が霞むほどの人・人・人で溢れていました。
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クリスマス市の定番と云えば「グリュー・ワイン」で、これ専用のワインにシナモンとか果汁を加えたワインのお燗です。
これを飲みたさにやって来る人達も多く、あちこちの屋台で飲み比べをしたりしている人もいるようです。
大抵は、その土地の絵柄が描かれたマグカップの様な器で飲むのですが、中にはお土産としてカップを買う人もいて、そこそこ良い値がしています。
私はこのちょっと甘酸っぱい香りと、クリスマス市独特のシナモンやアニスの匂いが苦手なので遠巻きに眺めているだけです。
お燗は絶対に日本酒だし、ワインはちょっと冷えていた方が美味しく頂けます。

クリスマス市もこの週末で終わり、後は新年まで静かな日々が続きます。

家内からのカードも今はまるで屏風を広げたように見なくなったテレビの上で鎮座しています。



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by Atelier-Onuki | 2013-12-21 05:29 | ウィーン | Trackback | Comments(0)

「サイモン・ラトルとウィーン・フィル定期演奏会」から

先週に引き続き週末だけウィーンへドンボ帰りです。

それはウィーン・フィルの定期演奏会のチケットが取れたとの連絡を受けたので急遽行ってきました。
この演奏会は今シーズンの目玉の一つと思われたのですが、如何せん定期演奏会、・・・ 
それも日曜日の公演は殆どの席が先祖代々受け継がれた会員の人たちによって埋まってしまい、一般には中々チケットが出回りません。

そこでウィーン・フィルの公演に強いチケット・ビューローに頼んでおいたのですが、やっと入手ができた訳です。
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珍しくポカポカ陽気のなかイソイソと会場へ向かいました。
案の定この日はお年寄りの姿を多く見かけます。
入手した席はパルテレ・ロジェと云う平土間の両サイドにある一段高い所でした。
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ムジーク・フェラインは何処に座っても素晴らしい音響なのですが、特にこのロジェはオーケストラから臨場感溢れる音がダイレクトに伝わって来るし、
時折、跳ね返って来た音とが混ざり合ってふわっと音に包まれたような感触に浸ることができます。

演目は前半がヤナーチェクの「利口な女狐の物語」からの組曲と、後半がマーラーの「大地の歌」でした。
ソリストはメゾ・ソプラノがラトル夫人のマッダレーナ・コジェナ、テナーがミヒェエル・シャーデとバリトンにサイモン・キエンリーサイドでした。

「利口な女狐」は動物達が一杯登場するしオペラを観た方が楽しめるのでしょうが、
場面を想像しながら聴く事になります。
幻想的な音響に自然描写も綺麗だし、オーケストレーションも手が混んでいて盛り上がりも充分な音楽で楽しめました。
唯、歌詞は何語?モラビア語?か分からず聴き取ることができなかったので残念でした。
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いよいよ後半はメインの「大地の歌」です。
この曲は当然ながら、マーラーが音楽監督だったウィーン・フィルとは深い縁があります。
マーラーの弟子だったワルターが戦後初めてウィーンに復帰した公演でこの曲を取り上げましたし、
バーンスタインがウィーンに初登場した時もこの曲で、時代の節目に取り上げられて来ました。
尤も私にとっても初めて聴いたマーラーは山口君家で聴かせてもらったバーンスタインのこの演奏でした。

ラトルのマーラーは6月に2番を聴いたのですが、それは曲と演奏の余りにも素晴らしさに、
暫くの期間立ち直れないほど打ちのめされましたので、
この日も最初の音がどう出てくるのかワクワクしながら待っていました。

ポポーンポン・ポポポ、ポーンと力強くも味わい深くホルンが響きだしました。
この一撃でもうこの先が「こりゃ良いぞッ!」と期待できる出だしです。
生き生きとしたオーケストラをバックにテノールのシャーデもリリックながら張りのある声で力強く歌い出しました。
ラトルはもう少し室内楽的に鳴らすのかなぁと思っていましたが、ウィーン・フィルを相手にオーケストラを充分に鳴らしシンフォニックな表現です。
そりゃこんな音で鳴らされたら大きな音を出したくなるでしょうね。
これは指揮者が一番気持ちよく聴いているかも知れません。

それにしてもこのオーケストラはやっぱり別格、・・・ 
フォルテでもウルサイなんて感じとは無縁で気持ち良く身を委ねられるし、あくまでも柔らかく響きます。
逆に静かな所でも痩せることなく充分豊かに響いているエネルギーが伝わってきます。
それにバイオリンにしろ木管にしろソロで出てくるとウットリと聴き入ってしまいます。

一楽章はあっという間に過ぎて行き、ヴァンと言う金管と低音弦のピッチカートで渋く締めくくられました。

二楽章はメゾ・ソプラノのコジェナが移ろうオーケストラの響きに乗って静かに歌い出します。
これは本来アルトが歌うのですが彼女は多分声域が広いのでしょうね。
彼女の歌唱を聴くのは2番に引き続き二度目でしたが、最初の一声からリリックで清涼な声に感心です。・・・ 
伸びやかな声で通りの良さも充分、歌い方も丁寧で、「コジェナやるなぁ!」
とすっかり虜にされてしまいました。

五楽章の「春に酔えるもの」でもシャーデは熱唱を繰り広げ、見事に歌いきりました。
これにはラトルも大満足をしたのか、まるでオーケストラに残響のビブラートを指示しているかの様に、
これ以降出番のないシャーデに向かい空で熱い握手をしていました。

寂しくも夢見心地の部分や躍動する所など、多彩な表現でグングン進んで来た曲も、惜しまれつつとうとう最終楽章の「告別」を迎えてしまいました。

グァ~ンと寂を効かせた不気味な響きで、この厭世的な曲のメイン・テーマでもある長い楽章の始まりです。
「夕日は西の彼方に沈み・・・」と静かに慈しむように歌われ、中間部ではオーケストラのみで長いフレーズを面々と語られていきます。

フム? ・・・前方中程の平土間席辺りで何か不審なザワめきが、・・・
どうやら一人のお爺さんに異変が起こったようです。
お爺さんの元へ集まる人々、係員に知らせに走る婦人・・・
ソリストやオーケストラの数人は気づいていますが、後ろ向きのラトルは見えないし、
この果てしなく深刻な音楽は面々と綴られています。

数人がお爺さんを抱えて退出して行きました。

その間、再びソリストが歌いだすと、とうとうクライマックスを迎え最後は「永遠に、・・・永遠に・・・」と静かに静かに惜しむように曲が閉じられました。

まぁ内容も「告別」なのでお爺さんにとっては、ある意味良かったのかも知れませんが、
介抱されていた方々はもう席に戻ってくる事はなく本当にお気の毒でした。
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by Atelier-Onuki | 2013-12-18 05:07 | ウィーン | Trackback | Comments(0)

「アーノンクールとウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの演奏会」から

今回ウィーンでのメイン・コンサートの一つ、アーノンクールの演奏会でした。
演目はベートーヴェンの1番と3番「エロイカ」のシンフォニー。
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もう今から20数年前に彼のベートーヴェン全集が発売された時はセンセーショナルを引き起こしました。
それはベートーヴェンがこれらの曲を発表して以降、楽器の改良があったり会場も大きくなるにつれ、
19世紀、20世紀と色んな人達の手によって手が加えられ発展して行きました。

私のようなオールド・ファンはベートーヴェンに初めて接した時から、ズットこの手が加わったバージョンに慣れ親しんで来ましたので
それがスタンダードになっていて、この演奏スタイルは新鮮でもありながら、ちょっと戸惑いも感じました。

アーノンクールはご存知の通りバロック音楽の権威者としてスタートし、
楽譜も原典にこだわり楽器や演奏方法も基本のオリジナルを徹底的に研究をした人です。
この録音では現代のモダン楽器を使用しているヨーロッパ室内管との演奏でしたが、
トランペットとティンパニーはベートーヴェン時代と同じようなオリジナル楽器を使用し、演奏法は原典どおりノン・ビブラートのピリオド奏法です。

これが出る前にも初演と同じ規模の小編成によるオリジナル楽器での演奏もあったのですが、
如何せんそれらは未だ学研的な領域で面白さには欠けていました。

このグラーツでのライヴ録音はその後多くの演奏家に影響を与え、今日も続いているピリオド奏法ブームの火付け役となりました。

会場のムジーク・フェラインもさすがマニアックな聴衆が詰めかけているようで、ちょっとピリピリした雰囲気です。
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オーケストラが入場して来ましたが人数を数えたくなる位の小編成です。
まぁ最初は1番のシンフォニーなのでこれ位の人数でも大丈夫だと思うのですが、実際数えてみると39人しか入っていません。

きめ細かな調弦が終わり、アーノンクールが登場しました。
手にはマイクと紙切れを持っています。
この人はウィーンでの演奏会では時々あるのですがレクチャーが大好きで、この日も会場の緊張感とは裏腹に笑いを交えたトークが始まりました。

内容は半分も分かりませんでしたが、この時代のピッチの設定やその後フランスでそれが決まってきた旨や、
ナチュラル・ホルンでの音程の難しさなど解説していまいた。

いよいよ曲の始まりです。
この曲は未だハイドンやモーツァルトの影響を強く受けていると云われていますが、
どうしてどうして、ベートーヴェンは最初の一音から独創的なことを試みています。
それは木管楽器と弦のピッチカートで始められるのですが、こんなのはそれまで無かったアプローチだし、
現在の技術的に優秀なオーケストラでもこの頭を綺麗に揃えるのは難しいと思われます。

さすが鍛えられているこのオリジナル楽器によるオーケストラはものの見事なアインザッツで始められました。
曲は生き生きとしたテンポで推進していきます。
表現の幅も広く血が通った暖かさも感じさせてくれます。
強弱も充分取られアーノンクール特有のアクセントを付ける所、録音ではいささかきつく感じる部分でもライヴだと充分柔らかい表現で心地よく感じます。

木管など単に穴が空いているだけの代物でクラリネットにしろオーボエにしろ、小学校で習うリコーダーとなんら変わりはありません。
金管に至っては弁が付いていないので、唇と吹き方だけで音程を調整しなければならないので大変です。
ティンパニーも小ぶりでパラパラと乾いた古風な音がしています。
二楽章ではそれに薄手のショールみたいなものを被せ更にオドロオドロした表現をしていました。

時折、見事な装飾の天井を眺めながら、フーム、ベートーヴェン時代はこの様な響きで鳴っていたんだなぁと想像を膨らませていました。
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休憩を挟んで次は3番のシンフォニー「エロイカ」です。
演奏の前には又アーノンクールのレクチャーが入りました。
「今度は短いからね・・・」とちゃめっぽくナポレオンとの経緯などを語っておられました。
さすがこの曲はもう少し編成が大きいかと思っていましたが、たった一人ホルンが加わっただけでピッタリ40人でした。
まぁホルンは3本でハモル所があるのでギリギリで増えた感じです。
ジャン・ジャンと始まった響きはこの人数にしては充分な音量です。

あのモーツァルト最後のシンフォニー、あくまでもロココ風の優雅な曲からたった10年位後に発表されたこの曲は全く違う世界で、
音量も物凄く大きくなっているし、優雅さとは縁遠い無骨なもので精神的に深い音楽となっています。
(勿論モーツァルトのこれらの曲も深いのは承知の上ですが・・・)

鳴っている演奏は超一級でオリジナル楽器による演奏としてはこれ以上望めない程の事は充分心得ている積もりなのですが、
途中から段々とこのガット弦によるピッチや木管群も上手い演奏なのですが、疲れを感じる様になりだしました。

やはり、これくらいの規模の曲あたりからは、もう少し膨らみや響きの豊かさ、深みや柔らかさが欲しくなって来ます。

こんな感覚はモダン楽器で演奏する今日の一般的なオーケストラからは感じない物足りなさです。

ベートーヴェンが亡くなり、たった10数年くらい後から楽器は大きく改良され進歩して行きます。
そのこと知らないままだったのはお気の毒なのですが、
一方別の考え方をするとベートーヴェンは遥にその時代を超えた発想をしていたとしか思えません。

むしろ彼の曲が先にあったので、それが楽器の改良を要求したり、会場の大きさも要求して行ったのではないでしょうか。・・・
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この演奏会を通じて改めてベートーヴェンの偉大さ、凄さを痛感させられました。


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by Atelier-Onuki | 2013-12-14 07:23 | Trackback | Comments(0)

図らずも「ベートーヴェン週間」に

この夜はアーノンクールとコンツェントゥス・ムジクスでベートーヴェンの1番と3番のシンフォニーを聴く予定でした。

今回のウィーンでの演奏会はベートーヴェンばかりを聴くことになり、図らずもベートーヴェン週間になってしまいました。・・・ 
こうなったらベートーヴェンにとことん迫ろうと朝から彼のお墓参りにと中央墓地を目指しました。
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この広大な墓地はウィーンの観光名所の一つで、墓地が観光対象なんてのも実にウィーンらしい感じがしますし、
空港から街に向かうと一番先に出くわす観光地が墓地というのも他に例がありません。

それは多くの著名な作曲家や音楽家が纏まった地域に埋葬されているからです。

唯、モーツァルトは仮のお墓で、当初はウィーンに現存する一番古いSt.マルクス墓地の共同墓地に埋葬されたのですが、
その後どれが彼の遺体なのか分からなくなったからです。
これは天才として名声が高かった彼にしては、当時で一番安いお葬式をあげられた為で、何故そうなったかは未だに不明です。

ベートーヴェンのお墓も経っての希望で彼の隣に埋葬してもらえたシューベルトと共に、街中にあった別の墓地から移設されたものです。

又ショッテン・トアからこれも好きな路線71番のチンチン電車に乗り込みました。
ベルヴェデーレの下宮を過ぎると街並みはぐっと鄙びて来て、それもドンドンと寂しい光景になって行き時間が止まっているようです。

途中St.マルクス墓地も通るので途中下車も考えたのですが、お目当ての屋台がすっかり姿を消していたので思い留まりました。
それはかつて「ウィーンで一番美味しい!」と評判のソーセージ屋さんがありました。
老夫婦の経営で自家製のソーセージを焼いていましたが、お爺さんは亡くなってしまったのでしょうね。
「それにしてもあのチーズ入りソーセージは天下一品だったなぁ~」・・・

寂しい思いも束の間、電車は中央墓地の第一門に到着、次の中央門で下車です。
電車の駅が3ツあることからもその広大さが伺われますが、墓地の中を巡回している公共のバスがあるほどです。
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この日も寒かったのですが、ここを最初に訪れたのも2月で、この閑散とした寂しい雰囲気がここには良く似合っています。
あの映画「第三の男」のラストシーンでもここの並木道が出てきますが、あれも晩秋の頃でしょうね。・・・ 背景にカラスがパタパタと舞っている寂しい風景はそのままです。
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さて中央にある教会を目指せば間もなく左側の広場に巨匠たちが眠っています。
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モーツァルトを中央に左にベートーヴェン、右にはシューベルト、その更に右の方にはJ.シュトラウスとブラームスが、この二人は意外と仲が良かったそうです。
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その背中合わせにはシュトラウス父とライバルだったランナーが隣り合わせ、向かいにはヨゼフとエドゥアルトのシュトラウス兄弟のお墓も。・・・
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スッペ、ヴォルフ、グルックそして教会側の角には12音階を象徴した交差点で構成された大理石によるモダンなシェーベルクのお墓があり、
気が遠くなる程に次から次かと出現するので、まるで宝探しの様相を呈してきます。

この裏側に回ると今度はロッテ・レーマン、そして長年ウィーン・フィルの名コンサートマスターだったボスコフスキーさんのお墓があります。
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この前では特に感慨深く佇んでしまいます。
と云うのも、もう40年以上前、未だ浪人をしていた時でしたが偶々武道館でウィーン・フィルのリハーサルに遭遇して、
休憩時間にボスコフスキーさんとお話をさせて頂く機会があったからです。
握手をしてくれた瞬間ガチッと手に当たるものを感じました。
よく見るとその太い指には大きな黒ダイアの指輪をはめておられた事を懐かしく思い出しています。

寒いし宝探しも疲れたので、隅っこの壁際に追いやられて可愛そうなツェルニーさんとサリエリにササッと挨拶をして墓地を後にしました。

又、ショッテン・トアまで引き返りましたが、こうなったら意地が出てきてもう少し探訪を続ける事にしました。
目の前にはヴォティーフ教会の透かし彫りの様に見える素敵な鐘楼が二本聳え立っています。
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私はズットここでベートーヴェンのお葬式を行ったと思い込んでいたのですが、後で分かった処によると更に左奥の方にあるアルザー教会であった事が判明しました。
「なぁ~だ。」そこは今回滞在しているアパートの並びで毎日その前を歩いていました。
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教会の正面にはベートーヴェンとシューベルトのレリーフが取り付けられていて、その縁が書かれています。
ベートーヴェンのプレートには「何年何月ここで祝福を受けた」旨のことが書かれていたのですが良く理解が出来ず、その祝福の意味が分かりませんでした。
その後、写真を見て良く調べて見ると、ちゃんと「この教会でこの不滅である遺体を祝福した。」と書かれていて日付も確かに彼が亡くなった日にちでした。
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この葬儀には二万人もの人が参列した事は挿絵も残っていて見たことがあったのですが、全くの無知でした。
何でも彼を慕っていたシューベルトも参列したそうです。
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なるほど彼が住んだ最後の家も近いので、ここでの葬儀になったのでしょう。

こうなったらその9番のシンフォニーを作曲したアパートへも足を延ばしました。
それは比較的大きなアパートで中は見ることが出来ませんが、中庭を通り裏のベートーヴェン・ガッセ(小道)に抜けることができます。
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その先にはあの映画「アマディウス」の冒頭で出てくるサリエリが入院していた精神病院が今も同じ病院として現存しています。
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ブラブラとショッテン・トアまで戻り、リング沿いのウィーン大学向かいに建つ立派なアパートへも足を運びました。
ここでは出たり入ったりと比較的長く住んだようで「フィデリオ」や交響曲では5番と6番の途中までと「エリーゼの為に」などを作曲しています。
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もう空はすっかり暮れてしまったし、寒いしもうこれ以上は辛いので探索はここまでとしました。
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ウィーンは来る度に何かと探訪をするのですが、掘っても掘っても未々知らないこと山ほどあるし、毎回新しい発見にも出くわすので切がないようです。



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by Atelier-Onuki | 2013-12-13 21:46 | ウィーン | Trackback | Comments(0)

フォルクス・オーパーの「メリー・ウィドウ」

この夜の演奏会はパットした公演もないし、シュターツ・オーパーの方はレンネルト演出の名作「セヴィリアの理髪師」ですが、
もう40年程使われている演出で今までに何度か観たこともあったので久しぶりにフォルクス・オーパーへ行く事にしました。
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出し物はレハールの「メリー・ウィドウ」でこれは未だ観ていない新演出バージョンで、
去年日本で引越し公演を行ったらしく、ご覧になった方もいるかも知れませんね。
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シュトラウスの「こうもり」と並んで人気が高いこのオペレッタは内容的には甘酸っぱい恋物語だし、
音楽は随所に甘いメロディーが散りばめられて、耳が蕩けてしまいそうなシーンが数多く点在しています。
「メリー・ウィドウ」と云う英語でのタイトルはこの内容に相応しい綺麗な響きですが、
原題のドイツ語では「ルスティーゲ・ヴィトヴェ」とちょっと汚い発音ですし、ましてや日本語に直訳してしまうと、
「陽気な後家さん」で、これでは観にいく気が中々起こりませんね。

舞台はパリで、とある小国(バルカン半島のどこかか?)の大使館を中心に展開して行きますが、この陽気な後家さんこと、
ハンナは資産家でフランス人のお年寄りと結婚をしていましたが、この程旦那に先立たれ20ミリオンと云う大金を相続することになりました。
これを目当てに大勢のフランス人男性が言い寄って来ています。
もし、フランス人と結婚でもする事になったら、その財産はフランスの物になってしまうので、
男爵を初め何とか昔恋仲だった外交官のダニロとの結婚を仕組もうとしています。
二人は未だ好きなのですが中々意地の張り合いで進展して行きません。
ハンナの方が先にその思いを打ち明けるのですが、ダニロはどうしても遺産目立てと思われるのを嫌い,
頑なに拒否し続けヤケクソ気味にマキシムに入り浸りです。
すったもんだの挙句、ハンナは夫の遺言によると「再婚をした時点で自分には相続権がなくなるのだ。」と告白します。
それを聞いたダニロはやっと素直に好きであることを告白します。
その遺言によると「相続権はその再婚相手に譲渡されるのだ!」との落ちまで付いてハッピーエンドとなります。

それにしても出演者の皆さんは熟れた演技で歌も上手だし踊りも充分こなしています。
マキシムに見立てたシーンでは歌手に混じってダンサーがカンカンを始めアクロバットもどきのダンスまであって盛り上がります。
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これらが後にアメリカに渡ってミュージカルに発展して行くのが良く頷けました。
そう云えば「ハッピーエンド」はハリウッド映画から出来た言葉でしたね。

ちょっと街から離れた所にある「フォルクス・オーパー」はローカル色満載で、
正に「民衆歌劇場」の名に相応しい場末感が漂っていて、この鄙びた雰囲気は大好きです。
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チケット売り場のオバさんから案内嬢まで皆さんノンビリモードで優しく対応してくれます。
それは出演者やオーケストラも同じで「ホナ~行きましょか!」と云った具合の気さくさでホットさせられます。

いい気持ちになれたので終演後はお気に入りの中華レストランで一杯でした。


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by Atelier-Onuki | 2013-12-12 04:43 | ウィーン | Trackback | Comments(0)

「グリンツィング界隈」へ

昨夜の演奏会が覚めやらぬ内にと、ベートーヴェンと縁の深い地を散歩しに出かけました。
ショッテン・トアから私の好きな38番の路面電車にダラダラと乗ること20分ほどで終点のグリンツィングに到着します。
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この終点の駅がまた好きでグニャと曲がりながら家の中へ突っ込むように入ると、それが終着駅になっていて、時間が止まっているような佇まいです。
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このグリンツィングは新酒をのませるホイリゲがたくさん点在しているのが有名で、色とりどりに塗られた可愛い飲み屋が軒を連ねています。
暖かい季節にはぶどう棚がある中庭で気持ちよい時間を過ごす事ができます。
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さて、それとは別に我々音楽ファンにとってたまらないのはベートーヴェンと深い縁があるからです。
彼は絶えず騒音問題など他の住民とのトラブルを起こしていたので引越し魔として有名ですが、
この界隈でも知られているだけで3軒のアパートが現存しています。
特に有名なのは「ハイリンゲンシュタットの遺書」を書いた住居で、現在は記念館になっています。
以前は中庭を挟んだ向側が記念館でしたが、最近は実際に彼が住んだ部屋が狭くなりましたが記念館として開放されています。
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唯、残念だったのは以前裏庭に出ることができ、そこからこの町名「ハイリゲンシュタット」の由来になった教会が見えたのですが、
昨年隣の家が増築したそうでこれが見えなくなってしまいました。
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これは音楽ファンにとっては重要な要素です。

すでに難聴が進行していたベートーヴェンは温泉が出るこの町に医者の勧めでやって来たのは29歳の時でした。
その丘陵地帯の風景が故郷ボン郊外にあるアール渓谷に似ていたのですっかり気に入ってしまいます。
すぐさまこのアパートに引っ越して来た彼がある日この教会の鐘楼を眺めていて、鐘が大きく左右に動いているのを見たそうです。
それに気づきながらも自分には全く聞こえていない事実に直面し、
音楽家としては致命的な現実を突きつけられた彼は弟宛てにいわゆる「ハイリゲンシュタットの遺書」を書きなぐります。
しかし、そのままの勢いで近くのホイリゲで酒を煽り、酔っ払った彼は死ぬのも面倒になって思い止まってくれました。
もし、近くにホイリゲがなかったら彼の「交響曲2番」以降作曲されたかけがえのない
名作の数々は存在しなかった訳で思うだけでゾッとしてしまいます。
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更に近くには3番「エロイカ」を作曲した住居がホイリゲとして現存しますし、少し下った大通りをグリンツィングの方へ
ダラダラ登って行くと「田園」を作曲したアパートも残っています。
唯、ここは一般の方が住んでおられますので入る事はできません。
このアパートには彼を慕っていたグリルパルツァーも住んでいたと看板に書かれていました。
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グリンツィングを通り抜け外れにあるベームさんが住んでいた立派なアパートまで歩きました。
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ぐるりと一回りして又教会まで戻り、この脇にある公園を散策。
それはあの教科書に良く載っているベートーヴェンが散歩をしている像があるからです。
最初に訪れた時は「人魚姫」や「小便小僧」の像と同じく、何~ンだとガッカリしたものですが、
最初から覚悟をして行くとそれなりに感慨深く見ることができました。
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この日はブラブラとエロイカ通りを抜けて彼の散歩道、いわゆる「ベートーヴェン・ガング」と云われる田園のインスピレーションを受けた
小径を歩きたかったのですがにわかに大粒の雪がえらい勢いで降ってきたので諦めてしまいました。

まぁ夜はベートーヴェンの世界からはかけ離れているオペレッタだったので、
どうしようかと迷っていたフォルクス・オーパーでの「メリーウィドゥ」を観に行く体力を残す事にしました。



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by Atelier-Onuki | 2013-12-11 05:33 | ウィーン | Trackback | Comments(0)

「オーケストラ・モーツァルトとハイティンク、ポリーニの演奏会」から

来年2月に予定されている大きなイヴェントの仕事は佳境を向かえ、決めなければならない項目が山積み状態、
あれこれと悩み多き日々ですが、寸暇を縫ってウィーンへ行ってきました。

それはアバドが長年の朋友ポリーニとベートーヴェンのピアノ協奏曲5番いわゆる「皇帝」を演奏する予定だったからです。
もうお二人ともご高齢だし、この組み合わせでの協奏曲なんて最後のチャンスかもと思い早々とチケットを押さえていました。

結局は心配をしていたアバドの健康状態が回復することがなくキャンセルされてしまいました。
9月の日本公演もキャンセルをされていますし、10年ほど前には胃がんの手術も受けられているので心配ですが、
又早く復帰されることを願うばかりです。

それでも代役にハイティンクと巨匠を立てたところはさすがです。

このオーケストラはボローニャで2004年にアバドを擁立して創設されたオーケストラで、
モーツァルトもボローニャで大きな啓発を受けた縁から彼の名が頭に付けられたそうです。
イタリアは何といっても音楽の先駆者にも関わらず、意外なことにシンフォニー・オーケストラは最近まで存在しませんでした。
それは個々の奏者は腕が立つのだが、個人プレーに走りがちでアンサンブルという点ではいささか纏まりに欠ける傾向がある為と云われていました。
そんな中、アバドは教育にも献身的に貢献している人で今までもヨーロッパ室内管やマーラー・チェンバー・オーケストラ、
そしてルツェルンの祝祭オーケストラを育て、いよいよこの若い人だけを集めたモーツァルト管弦楽団に取り組んでいる最中です。
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会場のムジーク・フェラインは何時もよりムンムンとした興奮気味の雰囲気で、聴衆の人々も気合が入っているようです。

緊張感が漂う中いよいよポリーニとハイティンクが登場しました。
ハイティンクは84歳と云うご高齢にも関わらずお元気な様子、それに引き換えあの「青白い青年」だったポリーニは少し背中を丸め小さくなったようで、
歩き方もちょっと危ない感じのヨチヨチ歩き、未だ71歳と云う歳にしては心配な感じを受けました。
かつて若いころは「追っかけ」がどの演奏会に行っても押し寄せていましたが、今はその面影を想像することが難しくなりました。

ダーンと堂々としたオーケストラの響きで始まった曲はすぐさまピアノがスタイリッシュに絡んで来て,
さすがピアノ協奏曲中の「皇帝」だとすでに再認識させられます。
ちょっと心配だったポリーニのピアノもクリスタルな輝きは健在で指の動きも衰えを感じさせません。
昔は剃刀のように鋭角的だった切れ込みも、今は少し角が取れ柔らか味や暖かさを感じさせるようになっています。
曲はスマートながら堂々とした巨匠の風格が漂っています。
それにしてもこのオーケストラは良く歌うし、奏者個々のレヴェルの高さがうかがわれます。
それにやる気満々のバイタリティが沸々と伝わってきて気持ちよく聴く事ができます。
編成も60人居るかいない位で、この曲にしては小編成ですが、ちゃんと豊かに響いています。
さすがアバド・・・良いオーケストラを育てているではないですか。・・・

まぁこの日はハイティンクの功績も大いに影響しているのでしょう。
ポリーニも何時ものアバドとの共演時の様に阿吽の呼吸で弾くのではなく、しっかりとハイティンクの意図に従っています。

時折重要なポイントではピアノに対してもさりげなく指示をだしていますが、ポリーニもこれにすかさず反応して引き締まった演奏になっています。

静かで何処までも綺麗に流れる2楽章を経て、切れ目なく移る3楽章もピアノが
何ともスムーズに自然な流れで入って行きました。
曲はスピードを上げながらもあくまでもスマートで気品が漂っています。
もう終ってしまうのが勿体無いと思わせるほどですが、この巨匠二人の共演は堂々としたコーダと共にエンディングを迎えてしまいました。
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さて、後半の演目は当初予定されていた、シューマンの交響曲3番「ライン」に代わってベートーヴェンの6番「田園」です。
まぁシューマンの「ライン」も好きな曲ですが、ここはウィーンですから個人的には「田園」になってくれて嬉しく思っていました。

シミジミとした思い入れで始まった曲は落ち着いた雰囲気の中ゆったりと流れて行きます。
ハイティンクという人は昔から伝統的な解釈で、表現も中庸を得ていてけして冒険をしない指揮者です。
少し不器用な所もあって面白く聴かせるようなタイプではありません。
唯、ここ数年来はさすが巨匠の域にまで来ていて、その表現は迷いがなく堂々としていて、
曲のツボをしっかり押さえていますから安心して演奏に委ねることができます。

この曲も何の滞りもなく自然に流れていて気持ちよく聴く事ができます。
時折、ピアニッシモからフォルテまでの強弱を大きめに取ったりと変化を付け曲に幅を持たせています。
それに表現があくまでも軟らかく深みもあってドンドンと引き込まれて行きます。
ここでもオーケストラの優秀さに感心で、その響きは明るく伸びやかでさすが南の国のオーケストラだと実感させられます。

4楽章、嵐のシーンでも感情に任せての音響とは無縁で、あくまでも音楽的な領域を踏み外さない落ち着きがあります。
あのブドウ畑が連なる丘陵地帯に明るい陽が差し込んでくる最終楽章も、落ち着いた歩みの中にイタリアの太陽が差し込んでくるような,
明るい響きが良く溶け合って気持ちよく全曲を聴き終えることができました。
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外は時折雪がチラチラしていますが、こんなに気持ちが良い「田園」を聴かせてもらったので、
「よし明日はヌスドルフへ行くぞ!!」と心に決めました。



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by Atelier-Onuki | 2013-12-10 04:09 | ウィーン | Trackback | Comments(0)