人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ヨーロッパへの憧れは… 3

会場に入るともう満員の観客、結構センターの席を買う事が出来たのですが、通路が両サイドにしかなくて「ソーリー、ソーリー」と何人もの人達を立たせてしましました。
一息ついた頃には軽快な序奏が始まり出しました。
1幕冒頭はクララの家へ続々と訪問者が訪れて来ます。
重厚で味わいのある建物のファサードは堂々としていて期待が沸いてきます。
間もなく室内のシーンへと転換していきますが、調度品やシャンデリアなどバレエとしては立派過ぎるくらいの豪華な装置です。 
特に目を見張るのはクリスマス・ツリーの立派な事。
私が日本で携わったときは、バックの布に描かれ、例のツリーが大きくなって行くシーンではバトンを吊り上げて行くと云うものでした。
処がこれはもう高さが5・6mあろうかと思われる丸物(立体でリアル)で、電飾を初めこれでもかとばかりの装飾が枝に施されています。
こりゃ~これ以上大きくしないのだ・・・と高を括っていましたが、夢のシーンに差し掛かるとこれがガサガサと揺れだし、まるで生物のように大きく成りだしたではありませんか・・・枝などはバサバサと音を立てて下のほうから跳ね上がって来ます。
何とそれにも電飾や飾りもちゃんと付いています。
それもドンドン止めどもなく、もう舞台の天井一杯まで大きくなりました。
いくら何でもこれ以上は・・・との思いとは裏腹にまだまだ大きくなりとうとう
プロセニアム・アーチを遥かに突き抜けて行きました。
いやぁ~さすがにアメリカのやる事はスケールが大きいと感心しました。
ネズミの大群との戦いもミニ大砲が出てきたりで大騒ぎ・・・
勝利した゛くるみ割り人形″が仮面をパッと取って王子に変身するシーンなど格好よかったな。
そして1幕クライマックスはクララをいざない御伽の国へ、雪のワルツのシーンでは
チラチラ降り出した雪が段々と強くなっていきます。
多分ステージの袖からウィンドマシーンか何かで風を送っているのでしょう、雪の勢いは益々まして来て、もう吹雪になって向こうが霞んでボーとしています。
舞台の奥の方に月がおぼろげながらも輝きだし、いつの間にか一本の階段がスッーと降りてきてそれに向かって行く所で幕となりました。

2幕目は御伽の国、大勢のちびっ子天使が現れ舞台一杯に大きな輪を作りました。
どの子もニコニコしていて、その可愛さには思わず微笑んでしまいます。
舞台一面にお菓子やレースの形をした装置は満点のメルヘン・・・
次々登場するパーフォマンスは楽しく、テクニックも素晴らしい・・・
特にアラビアのシーンでは一本足でトゥー立ちしたまま男性ダンサーに引かれ
なんと1m位は移動しました。
花のワルツからクライマックスへと盛り上がり、華やかな内に幕となりました。

終演後は余りの大きさのツリーにやたらと感心したので、そのままロックフェラー・
センターのもっと大きなツリーが見たくなりました。
センターへ行くまでのショッピング・ストリートにも天使の飾りが点在して雰囲気を醸し出しています。
もう正面にはモミの木がド~ンとそびえ立っているのが目に入って来ます。
それにしてもこの装飾の幾何学的な事、キチッと計算された飾り付けには恐れ入ります。すぐ手前はスケート・リンクになっていて大勢の人たちが滑っていました。

一方ヨーロッパは、このシーズン屋外のクリスマス・マーケットや街中にモミの木が立てられますが、装飾は素朴で簡素です。
電飾も豆球ではなくごく一般的な家庭で使う裸電球、飾りも感覚的に・・・と云うより適当にゴツゴツとした物が付けられています。
最初はちょっとガッカリしたのですが、慣れてくるとこれはこれで味わいがあって良いものです。
私はウィーンの市庁舎前のマーケットが赤や黄色のランタンが木々に付けられていてとても趣があって好きです。

by Atelier Onuki
~ホームページもご覧ください~

応援クリックありがとうございます!

人気ブログランキングへ
# by Atelier-Onuki | 2012-10-06 14:44 | アメリカ | Trackback | Comments(0)

ヨーロッパへの憧れは… 2

やっとホテルに落ち着いて、と云ってもこのホテル、タクシーが着くなり立派な制服をまとったドアマンがやってきて、さぁとドアを開けたと思うと直ぐさまトランクから荷物を取り出してくれます。
回転ドアなのに又ここにも別のドアマンが、中に入ると又更に別のドアマンが荷物を押して誘導してくれています。一体何人の世話になるのかしら。・・・

吹き抜けが大きいロビーはフカフカの絨毯で、何処からとなくピアノの音が聞こえてきます。中央にはびっくりする程大きな鳥籠がド〜ンとあって、たくさんの鸚鵡が飛んでいました。
レセプションでチェック・インをしようとしたらこのドアマンが隣にある銀行の窓口みたいな所へ行けと云っています。どうもシステムが違うようでここで予約の確認を取るようです。窓口の女性の英語は早口で聞き取ることができません。
「ニューヨークは初めてなの?」の問に「イエス、イエスの二つ返事」こちらはニューヨークどころか初めての外国です。
やっとゆっくりと優しく喋ってくれましたが、
つくづく俺は田舎者なのだなぁ〜と、妙に感心をしてしまいました。

早々に外へ出て、スタンドで新聞を購入。どの新聞にも昨夜のレノン事件が一面に大きく載っていて、改めてその事件の大きさに衝撃を受けました。

ひと夜があけ、ニューヨーク二日目はニュージャージーなど郊外のショッピング・モールへ行く予定です。 
当時の勤務先の社長が紹介してくれたリムジンの人が迎えに来てくれましたが、その車を見てエッこれ~と、後ずさりしそうになりました。
想像とは裏腹にそれはそれは大きなリムジンがドンと止まっています。
なんでもリンカーンだそうで、ダークブルーの後部座席は向かい合わせで9人は座れるかと思われるものでした。こんなのは映画でしか見たことがありません。

何店舗か一日かけて見て回り、夕刻にスタッテンアイランドからフェリーに乗って、自由の女神をかすめ、ダウンタウンへと到着しました。
車がフェリーから上陸した時のことですが、大勢の人が車を取り囲み前に進めません。
それも大声で何か叫んで、そのうちボンネットまで揺すり始める有様。
これは一体何事だろうか・・・唖然となるばかり。
よく聞くと彼らは口々に〝レノン・レノン"と叫んでいます。
「あぁ~そうか」とリムジンの人、何か分かったようです。
この車と同じ型にレノンも乗っていたそうで、しかも乗っているのは日本人、
どうも関係者と勘違いをされてしまったようです。
どうりで威圧的な感じではなかったのだ・・・と納得しました。

翌日は図面を届け、ちょうどお昼になるので近くのレストランを紹介してもらいました。
セントラル・パークに面した「ルシアン・ティー・ルーム」と云う所。
グリーンのテントが車道までドーンと突き出していて、いかにも高級そうな感じです。
内装もクラシックでゴージャス、フト壁に掛かっている絵が気になったので見てみると、
なんと私が崇拝している装置家の一人レオン・バクストの版画ではないですか。・・・
この高級感とあいまって興奮と緊張が体を走りました。
お味も上品で、大味でボリューム満点の食事に食傷していた身には実に美味しく感じられました。
このお店ですが、何年か後にたまたま購入したホロヴィッツのレコードに、彼がお店に入っていくところの写真が載っていました。

グッケンハイム美術館やロックフェラーのツリーなどを見学し、夕方はリンカーンセンターを訪れました。
ここはスクエアの広場を囲むように正面がメトロポリタン・オペラ、
その右奥にジュリアード音楽院、右がニューヨーク・フィルの本拠地エヴェリー・フィッシャー・ホール、
そして左側がシティ・オペラとアメリカの重要な音楽拠点が集中しています。

先ずメトロポリタンへ行って見たところ、この日は公演がありません。
次にエヴェリー・フィッシャー・ホールへむかってみると、なんとギレリスとメータでチャイコフスキーのピアノ協奏曲ではないですか。これこそはと思い、当日券があるかどうか聞いた処、残念ながらソルド・アウトとの事。(これはCBSによってライヴ録音されています)
向かいのシティ・オペラはと云うと「くるみ割り人形」でこれも観てみたい。・・・
何人か並んでいたので尋ねてみると、キャンセル待ちの列だそうで、こちらはチャンスがありそうなので並ぶ事にしました。
まぁ市立歌劇場のバレエなので余り期待もしないまま、そしてギレリスに後ろ髪を引かれながらも、
何とか開演時間ぎりぎりにチケットを買う事ができました。

まだ続きます。

by Atelier Onuki
~ホームページもご覧ください~

応援クリックありがとうございます!

人気ブログランキングへ
# by Atelier-Onuki | 2012-10-03 00:54 | アメリカ | Trackback | Comments(0)

ヨーロッパへの憧れは… 1

子供の頃から音楽を聴くのが大好きで、学生時代もオペラやバレエの舞台装置を
勉強したせいもあってか、兼ねてよりヨーロッパへの強い憧れを抱いていました。
そんなある日、どうしたものか、「初めての海外旅行」にアメリカへ行っている夢を見ました。
これ程ヨーロッパへ行きたがっているのに、何故、余り興味の無いアメリカなんだろうと。・・・

処が、これが後々現実となってしまうのです。

その頃は、あるディスプレイ会社に勤めていたのですが、
そこで、研修と云う名目でアメリカへ行く機会を得たのでした。
ヨーロッパへの憧れは… 1_a0280569_14304310.jpg
仕事らしい仕事は、図面一式をニューヨークにある某代理店(実は今の会社)へ
届けるだけ…と云うありがたい出張でした。
当時、デパートなどの内装やディスプレイはアメリカから大きな影響を受けていまして、
実際、当時人気デザイナーだったウェルチなんて人は、
日本の大手デパートの全館改装を何店舗も手がけるほどの時流でしたので、
我々もアメリカのデパートや、当時流行りだした大型ショッピング・モールを
見に行くと云うのが研修の目的でした。

事実、彼が手がけた店舗は、折しも高級ブランド志向の時流にも乗り、
その徹底したコンセプトは百貨店装飾の革命となり、ブランド価値を大いに高めました。 
唯、売り場面積が売上に直結してると長年信じられていた日本の風土には
必ずしもマッチせず、そのスタイルは、後年段々と衰退していくことになるのです。

サン・フランシスコやロスのショッピング・モール、
それにニューヨークではブルーミングデールズやメイシーズの老舗百貨店などを訪れました。

丁度、クリスマス直前でしたが、さすがにスケールが大きく吹き抜けなども驚くほど天井が高くて、洒落たクリスマス装飾がふんだんに飾られていました。
ブルーミングデールズは百貨店のディズニーランドと云われていて、全館エキサイティングな装飾が施されワクワクするような楽しさに溢れています。
店内のどのフロアも、楽しく夢のある装飾で購買意欲をそそります。
各階のエスカレーターを上がった所には、特に大きなディスプレイスペースが設けられていて、
クリスマスの物語を連想させるような、なんともお洒落なディスプレイです。
店内の照明はわざと暗めに設定されていました。
ブティック形式の各売り場にも、ハイライトとなる商品のディスプレイがあり、
ジャンボテーブルの上にはコーディネイトされた極わずかな商品を飾って、ピンポイントで浮き立たせています。

ヨーロッパの国々ではかつて、土、日には店が閉まっていたので、週末のウィンドウ・ショッピングが人々にとっての楽しみでもありました。
このためウィンドウには未だに、これでもかとばかりにラインアップの商品が展示されています。

一方、ダウンタウンにあるメーシーズの方はちょっと大衆向けな雰囲気のお店で、
沢山の人でごった返していました。それでも、ゴトゴトと大きな音を立てて動く、ゴッド・ファーザーにも出てきた木製のエスカレーターに乗ることが出来き、感激したことを覚えています。

処でニューヨークへ着いた日はタクシーで市内へ入りました。
ちょっとウッディ・アレン似の運転手さんで、
以前に観た映画「マンハッタン」を思い出して、
あぁ〜あのニューヨークへ来たのだと、感慨深く思いを馳せていました。
タクシーがちょうどセントラルパークに差し掛かったころから、停滞が始まり中々前に進めません。先の方を見ると大勢の人が歩いて横切っています。
イライラしだした運転手はムーヴ、ムーヴと叫びながら車を小刻みに動かしています。
一体なにがあったのだろう、「デモ?」と尋ねてみると、
「お前知らないのか・・・昨夜レノンが殺されたんだ・・・彼のアパートがそこにあるから皆んな来ているんだ。」
「エッ・・・知らなかった・・・。」 唖然となりました。
ちょうど移動中にこの事件が起こったようで、ニューヨーク初日から一気にブルーな気分です。

この続きはまた。

by Atelier Onuki
~ホームページもご覧ください~

応援クリックありがとうございます!

人気ブログランキングへ
# by Atelier-Onuki | 2012-10-02 00:13 | アメリカ | Trackback | Comments(0)

バイエルン国立歌劇場 Tannhaeuser 2012年9月29日

今シーズン初回のオペラはタンホイザーでした。

バイエルン国立歌劇場 
【Tannhaeuser】
2012年9月29日(土)

指揮:Kent Nagano
演出:David Alden
舞台装置:Roni Toren
衣装:Buki Shiff

Hermann : Christof Fischesser
Tannhaeuser : Robert Dean Smith
Wolfram von Eschenbach : Matthias Goerne
Walther von der Vogelweide : Ulrich Ress
Biterolf : Goran Juric
Heinrich der Schreiber : Kenneth Roberson
Reinmar von Zweter : Christoph Stephinger
Elisabeth : Anne Schwanewilms
Venus : Daniela Sindram
バイエルン国立歌劇場 Tannhaeuser 2012年9月29日_a0280569_3571173.jpg


以下は私の個人的な嗜好に基づく評価ですので
含み置きの上ご参考ください。

演出:☆☆☆★★
装置:☆☆☆★★
演奏:☆☆☆☆★
歌手:☆☆☆☆★

演出は昨今流行りのモダンなスタイルだったけれども、嫌味のない、好感が持てるものであったと思う。当然ながら装置もモダンで、簡素なスタイルながら、登場人物が場面転換の動きにも積極的に組み込まれたものでさり気ないシーン展開がなされていた。
演奏は、ナガノの指揮でキビキビと活気のあるテンポで、細部まで気を配られたよく引き締まった演奏だった。歌手もゲルネはじめ、レベルの高いものであった。
ただ、まるで生贄のように横たわっていた牧童役の少年の設定が何を意図しているのか少し理解に苦しむところか…。 

by Atelier Onuki
~ホームページもご覧ください~

応援クリックありがとうございます!

人気ブログランキングへ
# by Atelier-Onuki | 2012-09-30 19:10 | オペラ | Trackback | Comments(0)

ウィーンの年末年始 2

処でニューイヤー・コンサートは、
公演の10日前にチケットが売り出されるとの情報を得ていました。
未々インターネットなど無い時代でしたから、情報を得るのも一苦労。
しかもウィーン特有の曖昧さ・・・この年も何枚売り出されるか、不透明。
なんとか200枚位売り出されるとの噂。

当然前の日から楽友協会のチケット売り場に並ぶのですが、
この厳しい寒さの中、ずっと外で並んでいるのは大変です。
このため、誰が考えたのやら、地元の人々の間では
点呼システムが確立されていました。

並んでいる順番にノートに番号と名前を書き込み、
時間を決めて点呼をし、その時本人が来ていないと
ハネていくと云う仕組みでした。

それも夕方から、夜11時、夜中3時そして朝6時の点呼という
なかなか厳しいスケジュール。

最後の点呼、朝6時の時点でやっと
手作りのナンバー・チケットを手に入れることができます。
朝10時頃だったか、チケット販売開始時間にチケット売り場へ行くと、
入手済みのナンバー・チケットに記載された順番通りに、
みんな順序良く並ぶことが出来るようになっていたのです。
地元の人々の情報に精通していないと難しかったこのシステム。
実は後に、あるオペラの公演の際、物議を醸し出すことになるのです…。


さて、我々は仲間と一緒に楽友協会の近くに住む作曲家Iさんのアパートで
合宿をさせてもらい臨戦態勢に入りました。

夕方並んでいますと見知らぬ日本人が寄って来て、自分は旅行会社の人間だが、
チケットを代理で買ってくれないかと尋ねて来ました。
規則では一人2枚まで買えるので、その内の1枚を売って欲しいとのこと。
出来るだけ良い席で、謝礼としてチケット額面プラス3000シリング
(当時にして3万円くらい)を払うとの事なのです。

貧乏生活をしていた我々は当然ながら二つ返事。・・・
そこでフッと先出、絵描きのKさんを思い出しました。
そうだ彼にも連絡をしてあげよう、という事に。・・・
もう待つ間もなく彼もソソクサとやって来ました。

ドキドキしながらも一晩の苦労の甲斐あって
皆な無事にチケットを購入できました。
ウィーンの年末年始 2_a0280569_1434186.jpg
そしたら無欲なKさん「僕は2枚とも譲ります。」との事、
「それでは気の毒だから、この一番安いチケットを上げます。」と旅行社の人。
でも、着て行く服が・・・
結局、彼は謝礼の6000シリングを元手に
仕立屋で一張羅をあつらえて、当日に備えました。

普段の演奏会とは違い、たくさんの花々で飾られたホールは華やかで、
改めてお正月気分も高まります。
この年はマゼールの指揮で、実に楽しく大いに満足させて頂きました。

この頃はまだ長閑で終演後にこの花々を持ち帰る事ができました。
何と楽団員の人達まで混じってステージ上の花を集めていたのですよ。
のんびりした時代でしたね…。

さて、このKさんは、その人柄がにじみ出たような、
精密で素朴なエッチングを描いていたのですが、
この純朴で欲のない性格が故に、後にまたラッキーな事が訪れて来ます。
この事は又別の機会にでも書きたいとなぁと思っています。

by Atelier Onuki
~ホームページもご覧ください~

応援クリックありがとうございます!

人気ブログランキングへ
# by Atelier-Onuki | 2012-09-26 23:49 | ウィーン | Trackback | Comments(1)